あしたをつくる、ひと、しごと。

  1. トップ
  2. これからを支える次世代ストーリー
  3. 食育、魚離れ、地域貢献など。鮮魚店の若き店主たちの熱い想い!

これからを支える次世代ストーリー

食育、魚離れ、地域貢献など。鮮魚店の若き店主たちの熱い想い!

2023.10.31

share

昭和の時代は、札幌市内にもたくさんの個人商店が軒を並べていました。スーパーが台頭しはじめ、大型のショッピングセンターが各エリアにできるようになると、個人の店舗は少しずつ減っていきました。さて、スーパーと個人商店の違いは何でしょう? 店ごとに店主のカラーがある、店主とのコミュニケーション、そこから得られる新しい情報などなど…。SDGsが採択されて以降、利便性や価格の安さを基準にした大量消費から、値段に関係なく、必要な分をどこで買うかを大切にする時代に少しずつシフトしており、「誰から買うか」を意識する人が増えている中、再び個人商店に注目が集まりはじめています。

今回は、「まちのお魚屋さん」に着目。市内にある鮮魚店の店主3人に集まっていただき、店をはじめた経緯や考えていることなどを語ってもらいました。参加していただいたのは、北区新琴似にある「みなとや鮮魚店」の代表・青木鉄兵さん、東区にある「一和鮮魚店」の代表・木島和哉さん、西区西野にある「新沼鮮魚店」の代表・新沼豊盛さんの3人です。実は、前職が一緒で先輩後輩関係にあたるなど、普段からとても仲が良いそうで、賑やかな取材となりました。

左から「一和鮮魚店」の木島和哉さん、「みなとや鮮魚店」の青木鉄兵さん、「新沼鮮魚店」の新沼豊盛さん

「みなとや鮮魚店」の青木さんは、兄貴のような存在。築地市場にいた経験も

まずは、この業界に入るきっかけから鮮魚店をオープンするまでの経緯を一人ずつ伺うことに。トップバッターは3人の中で兄貴的存在の青木さん。

「高校のとき、スーパーの中にある魚屋さんでバイトしていたのがきっかけで、この業界へ。そのままそこの社員になりました。仕事内容はハードでしたけど、就職氷河期で仕事を選べる感じでもなかったし、せっかく声をかけてもらったので就職したという感じでしたね」

青木さんが就職したのは、本社を関東に置く大手鮮魚店。入社して2年後には東京へ転勤することに。その後、キャリアを積むため別の鮮魚店に転職し、バイヤーとして築地市場に出入りできるようにまでなります。

青木さんのみなとや鮮魚店は、鮮魚だけでなく、一夜干しや漬けなど、自家製の商品も充実。

「基本的に負けず嫌いなところがあって、高校時代からいつか何かで独立したいと考えていました。最初は何で独立するか、自分の中で明確なものはなかったけれど、そもそも転職したのも自分のキャリアアップのためでした。魚屋でやっていこうと決めたのは、ちょうど築地に出入りさせてもらえるようになった、24、5歳くらいだったかな」

しかし、足をケガしてしまい歩行も難しく、やむなく札幌へ。足の状態を見ながら、無理のない範囲で鮮魚関連の会社に勤務することに。しばらくして何とか足も回復。仕事にも自信がついたので、魚屋として独立。2020年9月、新琴似に「みなとや鮮魚店」をオープンしました。

奥様と二人で店を切り盛り。息もぴったり!

3人の中で最初に独立し、先陣を切った「一和鮮魚店」の木島さん

次は、青木さんの後輩でもある木島さんです。年齢自体はこの中で2番目ですが、開業したのは2019年。3人の中では一番早い独立でした。

「僕は高校を卒業してから、この業界へ。親の紹介もあって、青木さんと同じ鮮魚店に入社しました。もともと魚釣りが大好きだったので、魚には抵抗ありませんでした。あとは、『給料いいから、いい車に乗れるよ』って言われて…。僕も若かったんで(笑)」

当初は札幌勤務の予定でしたが、入社後すぐに東京へ1年間研修に行くよう辞令が出ます。ちょうどその頃、東京で青木さんと知り合い、親しくなったそうです。

「ただ、すごいホームシックになってしまって…。半年で帰ってきたんです。ちょうど会社が札幌駅にできる百貨店にテナントで入ることが決まっていて、そのオープンに合わせて早く帰ることができたというのもあるんですが…」

どんなに忙しくても笑顔! スタッフさんも笑顔

それからは、札幌を中心に各百貨店に入る店舗などで経験を積みます。就職して3年ほどで、自分のやりたいスタイルの販売や接客を行うため、いつか独立しようと心に決め、その想いを温めてきました。独立に向けて他の会社も見てみたいと、別の鮮魚店にも入り、再び最初の会社へ。そして、2019年10月、東区に「一和鮮魚店」をオープンしました。

早い段階から独立を視野に入れていたことについて、「本当にイイモノをちゃんとお客さんに伝えたいという想いがあって、正直に誠実にお客さんと接したかったんです。会社員時代もそうやってはきましたが、百貨店は少し価格が高めだったりするのも自分の中で引っかかっていて。立地とかブランド的なイメージとか、事情があるので仕方ないのも分かってはいたんですけど…。だから自分で店を出したら、お客さんに対して価格も品質も、誠実に、正直に伝えたかったんです。そして、自由に楽しく、お客さんとやり取りしたかったんですよね」と話します。

一和鮮魚店の精鋭の皆さん。流れるような連携が見事

目の前のお客さまを大切にしたい。「新沼鮮魚店」の店主は職人気質

最後の新沼さんが独立したのは今年2023年の5月。西野に「新沼鮮魚店」をオープンしました。先に独立していた青木さんと木島さんにはいろいろ相談に乗ってもらったそうです。

「僕がこの業界に入ったのは高校生のとき。出身が安平町で、苫小牧の高校に通っていたんですが、友達が当時苫小牧にあった百貨店内の魚屋にバイトの面接に行くとき、一緒について行ったら、流れで自分もバイトすることになってしまい(笑)。それがきっかけでこの業界に入りました」

高校卒業後、1年間はバイトのまま苫小牧で働き続け、そのあと社員として採用されます。木島さんがいた会社と同じ会社で、木島さんと同じく、札幌駅の百貨店が入るテナントオープンに合わせて札幌の店へ異動となります。その後、市内の百貨店の店舗を順に回り、店長経験を経て独立しました。自分の理想とする店づくり、自分が納得いく店の在り方を追求していくと、結果として独立することに繋がったと話します。

ひとつひとつの作業を、丁寧に。納得いくものをお客さんに

「職人気質なのか、僕は人を使うのが上手ではないんです(笑)。自分のやりたいようにできないことに対してすごくジレンマを感じてしまうタイプ。だから、買い付けして商品を並べるところから、お客さんとのやり取りまでの一連を、全部自分でやりたかったんです。目の前のお客さんのために一つひとつを丁寧に、納得いくようにやりたくて…」

店長として百貨店の店に立っていたときは、うろこがキレイに取れていないのを見つけると、「煮付けたらうろこが浮いてきてお客さんがおいしく食べられない…、自分だったらキレイに全部取るのに…」と気になって仕方がなかったそう。

同じ時期に働いていた木島さんは、「新沼さんとは戦友みたいなものなんですけど、新沼さんはこう見えて、会社員時代は部下から怖がられていたんですよ。僕、よく下の子から相談されました」と笑います。「えーっ!そうだったの?」と苦笑する新沼さん。

木島さんと新沼さん、それぞれタイプは違えど、独立するまでの想いを聞いていると、愚直に誠実に仕事と向き合ってきたのだろうなと想像できます。

とってもオシャレな新沼鮮魚店の店内。奥様とのお揃いの前掛けも素敵!

イイモノを提供するのは当然のこと。+αのそれぞれの店の個性が面白い

次に、独立して鮮魚店をやるにあたってのポリシーやこだわりについてそれぞれ伺うことに。

「もちろんイイモノを提供するという大前提は、3人とも一緒だと思います」と青木さん。木島さんも、「旬の美味しいものを提供するのは当然のこと。あとはお客さんに対して誠実に接することをすごく大事にしています」と話します。

青木さんは、「魚をおいしく食べてもらうためにいろいろな提案をしていくことも自分の大切な役割だと考えています」と話し、簡単でおいしい魚の食べ方を伝えていくことに力を入れています。多くの人が抱いている魚の食べ方の固定観念を打ち破りたいと考えているそう。例えば、鍋のイメージが強いアンコウなら、から揚げやトマト煮を勧めるなど、「これならうちでもできるかも」と思わせてくれる知識やヒントを与えてくれます。

「おいしい食べ方やレシピ、食べやすさをはじめ、肉にはない魚の楽しみ方を伝えたいと思っています。これは、スーパーではできないことで、対面販売の自分たちだからこそできること。結果として、それが食育にも繋がっていくと考えています」(青木さん)

木島さんも対面販売だからこそできること、大事にしたいことを次のように話します。

「うちのショップカードに描いてあるロゴ、人と人が魚を挟んで向き合っているんです。対面販売の良さや大事なところって、人と人がきちんと向き合って話すことだと思っています。僕も楽しく、そしてお客さんも楽しく買い物してもらえるのが一番」(木島さん)

新沼さんはまだまだいろいろなことが手探り中と話しますが、「どうやったら魚をもっと食べてもらえるかをいつも考えながら店に立っています。僕は1回にいっぱい買ってもらうより、毎日少しでもいいから買い物に来てもらえるような店にしていきたいと思っています」と続けます。

どうすれば毎日通いたくなるか、日常的に利用しやすいか。3人ともそれぞれ試行錯誤しながら、店づくりに励んでいます。

選りすぐった旬のさかながずらり!(新沼鮮魚店)

青木さんは、お客さんの好みや店をいつも訪れる時間などをしっかり頭の中にインプット。仕事帰りに寄ってくれるお客さんなら、帰ってすぐに簡単に調理できるものを勧めるなど、細かいところまで考えて接客を行っているそう。ちょっとした気遣いがリピーターに繋がっているようです。

新沼さんも日々あれこれ試しているそうで、「大きめのアサリの一粒売りをやったりしました。結構反応が良かったので、その流れでシジミの一粒売りもやりましたが、シジミはダメでしたね」と笑います。「シジミ一粒はちょっと…」と苦笑いする木島さんの横で、「でもさ、そのチャレンジが大事じゃない? デパートやスーパーじゃそんなことできないから」と青木さん。

また、3人ともお店のSNSを効果的に活用しています。中でも木島さんの一和鮮魚店のインスタは常連客の間でも話題。「店長イケメンと言ったら割引」とか、「腰が痛くてさばけないから助けてください!」など、その楽しくて正直なメッセージに常連客も反応し、買い物に訪れてくれるそうです。「青木さんの投稿を盗んだりもするけどね(笑)」と木島さん。

『新沼鮮魚店』は、札幌市西区西野に、今年(2023年)オープン!

大事なのは地域との関わり。いつか商店街を作りたい!

地域に根差した個人商店だからこそできることとして、「地域貢献」を3人とも挙げます。各地域にいろいろな商店が並んでいた時代は、そこに暮らす人は皆「なじみの客」であり、そこには交流がありました。3人もそれぞれ自分たちの店が地域になじみ、コミュニティの場になればと考えているそうです。

「僕たちは魚屋だから魚を介してだけど、地域の人との温かいやり取りを大事にしたいと思っています。そして、地域の子どもたちにも魚を通じて、食を学んでもらいたいと思っているので、保育園や小学校の見学も受けています」(青木さん)

「魚屋のことを知ってもらうためでもあるけど、地域の人たちとの繋がりを大事にしたいなと思って」と、木島さんのところでは、毎月限定5家庭に、子どもが生後100日を迎えた際のお食い初め用の鯛を無料で配っています。

毎日同じ品揃えじゃないのが魚屋さんの楽しさ。今日は、どんな美味しいお魚に会えるでしょう!

新沼さんも、木島さんのこの取り組みについては導入を検討しているそうです。そんな新沼さんの店にも、毎日顔を出してくれる小学生がいるそう。「お母さんと一緒に来てくれることもあるし、一人で来ることもあって」と、小さな常連さんのことを楽しそうに話します。

数カ月前、3人で東京へ行った際、豊洲市場の見学のほか、東京で有名な砂町銀座商店街にも足を運んだそう。魚屋だけでなく、八百屋、肉屋、酒屋、菓子屋などが並び、活気あふれる商店街に3人とも感銘を受けたと言います。自分たちもいつか地域の人たちのコミュニティの場にもなる商店街を作りたいと夢を描いているそう。

魚離れを止めるため、消費者との架け橋である自分たちが頑張らなければ!

魚離れを指摘されることが増えている昨今。20年近く魚業界に携わっている3人も、時代の変化とともにお客さんたちの魚に対するニーズや嗜好が変化していると話します。

「僕がバイトしていた頃は、肉より魚のほうが価格も安くて、日常的に各家庭の食卓に魚がある印象でした。肉は特別なときに食べる感じだったのが、今は逆転していますよね」(青木さん)

「みなとや鮮魚店」は、札幌市北区新琴似にあります

さらに、昔は魚を家庭でさばくことが当たり前だったので、さばかない状態でも売れていましたが、今はゴミ問題などもあり、各家庭でさばく機会は減っています。

漁業従事者だけが頑張っても魚離れを食い止めることはできません。やはり、消費者との架け橋となる3人のような鮮魚店の存在が大事になってきます。「そのためには、魚は面倒という意識をなくしてもらうことが必要。魚を食べたいけれど…という人たちに向け、今はすぐに食べられる状態にして渡す時代なのだと思います」と青木さん。さばくことだけでなく、魚を焼く際にグリルを使いたくない、後片付けが面倒という人が増えていることも食卓から魚が減っている要因のひとつ。青木さんは「フライパンでもおいしく簡単に焼けるテクニックを僕たちも知っているので、そういうのももっと伝えていきたいですね」と話します。

「もともと魚をたくさん食べてきた日本で、魚を食べる文化を絶やしてはいけないと思っています。これって、すごく重要な課題だと思うんです。30、40、50代の人たちにもっと魚をおいしく食べてもらって、次世代に繋いでいかなければならないし、そのためには小さな店であっても自分たちが頑張らないとならない。ニーズに応える以前にニーズを作っていくことが、僕たちが今やらなければならない仕事だと感じています」(木島さん)

『一和鮮魚店』は、札幌市東区にあります

「僕たちは小さな店ですけど、地域の人たちに向けて魚のおいしさや魚のことを面と向かって伝えていくことができます。少しずつかもしれないけれど、お客さんと一緒に成長していけたらいいのかなと思います」と新沼さん。たとえば、北海道が日本一の漁獲量を誇るにも関わらず、骨がたくさんあるからと道民には敬遠されがちなニシン。新沼さんも木島さんも「食べ方も含めて、ニシンの歴史やおいしさも伝えていきたい」と話します。青木さんは、未利用魚と呼ばれる類の魚に関しても店頭で紹介していきたいと考えているそう。それぞれが自分たちの店で、魚離れを食い止めるため、できることに取り組んでいます。

3人のほかにも、同世代の「まちのお魚屋さん」仲間が市内にはいるそう。3人も「いろいろな地域にお魚屋さんがもっと増えたらうれしい」と話します。もし、近くにお魚屋さんがあるという方、これを機に思い切って店の中に入ってみませんか。そして、是非店主に話しかけてみましょう! 店主とのやりとりは、対面販売ならではの楽しさを教えてくれるとともに、きっと食生活をより豊かにしてくれるはずです。

青木鉄兵さん

みなとや鮮魚店

青木鉄兵さん

北海道札幌市北区新琴似11条3丁目5/7

みなとや鮮魚店 Instagram

木島和哉さん

一和鮮魚店

木島和哉さん

北海道札幌市東区北39条東7丁目1-15

一和鮮魚店Instagram

新沼豊盛さん

新沼鮮魚店

新沼豊盛さん

北海道札幌市西区西野2条3丁目1-1

新沼鮮魚店Instagram

キャラクター