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いつか大通公園で音楽フェスを。マルチメディアクリエイターが描く夢

2024.2.26

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Vライバーとして自分を表現しながら、得意や好きを生かして軽やかに働き、辛いことも周りの支えで乗り越え、自分の夢を少しずつ形にしていく…。札幌を拠点にマルチメディアクリエイターとして活動しているRuggie(ラギー)さん。ここまでの歩みや取り組んでいることを伺っていると、マルチメディアクリエイターという肩書きでまとめてしまうのも少し違うような気さえする、そんな27歳です。

小学生の頃からIT系を目指し、高校時代からライブ配信をスタート

「ライブ配信をはじめたのは高校生のときからですね」と話すRuggie(ラギー)さん。青森県のほぼ中央に位置するという平内町出身で、ときどき訛りが混じったやさしい話し方が印象的です。

小学3年生からは五所川原市へ移り、高校卒業までそこで暮らします。平内町にいたころは、海で泳いだり、森で基地を作ったり、川で魚釣りをするなど、豊かな自然の中で遊ぶ日々。その一方で図書館にあったパソコンに触れるのも好きな子どもで、将来はIT系の仕事に就きたいと考えていたそう。

「小・中学生のときは目立ちたがり屋で(笑)、活発な子どもでした。小学生のときは生徒会長もやって、『こんなことやったら楽しいんじゃない?』って、いろいろなレクリエーションの企画を立てて、先生やみんなを巻き込んで実行していましたね」

みんなが楽しめるイベントを考えるなど、後半で紹介する現在の活動に通ずるものがこの頃からあったようです。

さて、理数系が得意だったRuggie(ラギー)さんが通っていた高校は、青森県内でも指折りの進学校。勉強や硬式テニスの部活の合間を縫って、スマホの配信アプリを利用し、ラジオスタイルの配信をスタートさせます。

もともと音楽も好きだったRuggie(ラギー)さん。小学生のとき、初音ミクなどボーカロイドが流行しはじめ、「まさにボカロ世代です」と話します。好きな歌を歌ったり、しゃべったり、自分を表現する配信を続けているうち、お金をもらえるようになります。

「実はアルバイトを禁止されていたんですが、ラケットのガットを張り替えたり、テニスシューズを買ったりするのに結構お金が必要で、配信でその費用を稼いでいました」

ゲーム業界に憧れ、公立はこだて未来大学へ進学するものの…

高校時代に描いていた夢は、小学生のときと同じくIT関連の仕事に就くこと。ITの中でも、「当時、スマホゲームに夢中になっていたので、ゲームを作りたいと思っていました」と話します。

高校2年生のとき、好きなゲームを作っていた会社出身の教授が、公立はこだて未来大学にいると知ります。「ここに行こう!」と決め、現役で同大学へ入学。大学時代は、飲食店や塾講師のアルバイトをする傍ら、ライブ配信は変わらず続けていました。

プログラミングはお手の物。たくさんの案件をこなしたそうです。

ところが憧れの教授のゼミは競争率が高くて入ることができず、プログラミング言語の研究を行ってるゼミに入ります。

「入りたかったゲーム会社への道が遠くなった感じがしましたが、ゲームに携われたらいいかなと思ったので、そこは気持ちを切り替えて、ゲームで使う言語開発をしようとその研究に励んでいました」

ここでてっきりゲーム関連の会社に就職するのかと思いきや、「実は一カ所に縛られて仕事をするのがイヤなタイプであることに気が付いて、派遣で働くことにしたんです」と意外な展開に。

東日本を転々と…。行く先々で好成績を収めるスーパー派遣社員

就職活動をしないと決めたRuggie(ラギー)さん。大学卒業後は派遣会社に登録し、自分が気になる仕事や場所があればそこへ行くという生活をスタートさせます。北海道を飛び出し、東北6県や関東甲信越地方を数カ月ごとに移動。

「最初は東北エリアの家電量販店で携帯電話の販売をやったんですけど、ノルマをどんどん達成できちゃって」と笑います。達成秘話を聞くと、端末のスペックなどをすべて網羅し、それらを分類、整理。お客さんが分かりやすいよう表にして、それを使って接客販売をしていたそう。さすが理系です。

さらに、「観光したいなぁと思うエリアの仕事があればそこへ行って、休みの日には観光スポット巡りもしていた」と話し、栃木県や石川県などのホテルにも勤務。学生時代から付き合っていた彼女も一緒に同じところで働いていたので、旅行感覚で楽しかったそう。

その後も札幌のコールセンター、関東圏でのエアコン販売、生まれ故郷の平内町のガソリンスタンド勤務といった仕事を経験。エアコンやガソリンスタンドでも好成績を収め、当然「正社員で働かないか」と声をかけられます。

毎日配信を続けていたRuggie(ラギー)さん。エアコン販売の際、ノルマ達成で得たボーナスで、ずっと欲しいと思っていた高音質の配信が可能なオーディオインターフェイスやコンデンサーマイクといった機材の購入を決めます。

「それで、移動しながら働く生活をやめて一カ所に腰を据えることにしました。どこにしようかなと考えていたとき、付き合っている彼女の実家が札幌で、よく遊びに来ていてなじみもある町だったので札幌に住むことにしました」

同じタイミングで、札幌の企業からIT事業部創設に携わってほしいと声をかけられ、これも縁だとその会社に入社します。

辛い日々を支えてくれた配信のリスナーたち

ところが、会社に入ったものの、肝心の新事業がスタートしません。Ruggie(ラギー)さんは、待っていても仕方がないと事業計画書などを自分で作り、事業の立ち上げを進めはじめます。しかし、Ruggie(ラギー)さんの行動をよく思わない人たちと馬が合わず、思い悩んでいったそうです。

「人間関係が原因で体調不良に陥ってしまい、家から一歩外に出ようとすると過呼吸になったり…。病院へ行くと、統合失調症と診断されて…」

会社を退職し、治療に専念することになります。しかし、どんなに辛い状況でも配信だけは頑張って毎日続けました。

「リスナーの方たちには、自分がこういう状況であること、体調が良くないときは30分しか配信できないかもしれないことを声明文で伝え、とにかく続けました。でも配信を続けることで、僕自身のメンタルが保たれていたように思います。リスナーの人たちとのやり取りや励ましに随分と支えられました」

「頑張れ」の気持ちを投げ銭で表してくれるリスナーさんもいれば、Ruggie(ラギー)さんの話に「大丈夫、間違ってないよ」と声をかけてくれるリスナーさんも。中には、Amazonの欲しいものリストを通じて、プレゼントを贈ってくれるリスナーさんや長年付き合いのある配信仲間もいたそう。

「リスナーさんたちは顔を知らない人ばかりですが、配信を通じて、自分が一人ではない、こんなにたくさんの人に支えてもらっているというのが分かってとても嬉しかったです」

現在は体調も随分よくなり、通院も月1回ほどに。居酒屋でアルバイトをするほか、得意を生かしてフリーランスのシステムエンジニアとしても活動しています。もちろん、毎日の配信も欠かさず行っています。

現在はVライバーのRuggie(ラギー)として、毎日配信を実施

札幌へ移住してから購入したインターフェイスなどの機材を使って、ずっとやりたいと思っていた歌い手として音楽活動も行っているRuggie(ラギー)さん。歌を歌うようになってから、聴いた音楽を短時間で覚えられる特性を持っていることに気が付きます。

「30分間聴いた音楽は、すぐに再現できると気付きました。VライバーアプリのIRIAM(イリアム)のイベントで、投げ銭してくれたら好きな曲を30分で覚えて歌うという企画をやったことがあるんですけど、4時間20曲歌い続けたこともあります」

現在のRuggie(ラギー)さんの配信活動拠点は、このIRIAM。Ruggie(ラギー)名義でVライバーとして活動し、uni-cueENTERTAINMENT(ユニークエンターテインメント)という事務所にも所属しています。ライブ配信では、歌を歌ったり、おしゃべりをしたり、時にはリスナーさんたちと一緒にゲームをすることもあるそう。

Vライバーの「Ruggie/ラギー」としてマルチに活躍。

「所属Vライバーにはランクがあって、そのランクは投げ銭の数によって決まります。僕はリスナーさんとの交流を大事にすることをコンセプトに活動しているので、上のランクに行きたいとは正直思っていません。上にいけばいくほど、リスナーさんたちに投げ銭をお願いしなければならなくなるから…。それより、みんなと楽しく話せたらいいと思っていて」

Ruggie(ラギー)さんのそういうやさしさが伝わっているからこそ、統合失調症で辛い思いをしているときに支えてくれるリスナーさんがたくさんいたのかもしれません。

イベンターとして会社を立ち上げ、大きな音楽フェスを企画したい

Ruggie(ラギー)さんはVライバーの配信のほか、appassionato(アパッシオナート)名義で「北海道歌い手ライブ」といったライブイベントも主催しています。このライブは配信もしますが、実際に会場を借りてリアルに行うそう。

「コロナのとき、ネット上で活動する歌い手がすごく増えました。そういう歌い手の人たちの活躍の場を広げていきたいと思って、ライブイベントの主催を始めました。僕自身も歌い手ですが、自分を売り出したいとは思っていなくて、むしろイベントの企画や運営をするディレクターやプロデューサー的なことをやっていきたいんです。プレイヤーの気持ちや考えも分かるイベンターとして、2年くらいかけてappassionatoの活動を大事に育てていきたいと考えています」

ゆくゆくは、札幌で音楽イベントの会社を立ち上げたいという夢も持っているRuggie(ラギー)さん。「札幌の街は再開発がどんどん進んでいて、どんな街に変わっていくのかワクワクしています。そんな札幌で音楽イベントをやっている会社は限られているので、ぜひ自分でやってみたいと思っています。予定では8年後です!」と具体的に話します。

「北海道歌い手ライブ」の開催を予定しています。

実は、会社を立ち上げた際のメンバーもほぼ決まっているとか。Ruggie(ラギー)さんの夢に共感するリスナーの方たちが、「マーケティングやります」「プロモーターできます」「経理を担当します」とそれぞれの得意を生かして、関わりたいと手を挙げてくれているそう。

「札幌をはじめ、北海道はサブカルチャーや新しいものを柔軟に受け入れる土壌があるなと感じています。会社を立ち上げたら、いつか大通公園で大きな音楽フェスとかやりたいですね」

これから先の話をしているRuggie(ラギー)さんはとても楽しそう。数年後、市内のあちこちでRuggie(ラギー)さんのappassionatoが主催する音楽イベントが行われているかもしれませんね。

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