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温泉だけじゃない! アウトドアスポットとしても注目の定山渓

2023.10.31

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200万人規模の都市・札幌には、「奥座敷」と呼ばれる定山渓温泉があります。支笏湖洞爺国立公園の中にある温泉街で、市街地から車で1時間ほどの距離ということもあり、日帰りで訪れる市民も多数。かつては、温泉に浸かることだけが目的で訪れる人が多かった定山渓ですが、ここ数年はオシャレなレストランやカフェが増え、アウトドアなどさまざまなアクティビティも盛んに。季節ごとにイベントも開催され、定山渓という場所に訪れることに魅力を感じて足を運ぶ人が増えています。今回は、そんな定山渓の魅力を発信し続けている定山渓観光協会のマネージャー・橘真哉さんに、定山渓のことやこのエリアへの想いなどを伺いました

温泉街には、眺望スポットに足湯、そしてパワースポットまである!

まずは、観光協会の事務局がある「定山渓観光案内所」へ。ここでは、おすすめの観光スポットやアクティビティを紹介しています。壁には、定山渓温泉の大きなマップが掲示され、アクティビティなどの観光に関するパンフレットや冊子も揃っています。

情報満載。お気軽に訪ねてみてくださいね!

最初に対応してくださったスタッフの方に、「ちなみに…」と気軽に行ける温泉街の観光スポットを尋ねたところ、「初めて定山渓にいらした方なら、紅葉の名所で景色が素晴らしい『二見吊橋』、温泉の開祖である美泉定山の像があって、足湯や温泉たまごを作ってお楽しみいただける『定山源泉公園』、それから洞窟に33体の観音像が並ぶ『岩戸観音堂』がおすすめです。観音堂はパワースポットとしても人気です」と笑顔で対応してくれました。

親しみやすい雰囲気と、分かりやすい説明に「なるほどぉ」と感心していると、今日の主人公・橘さんが登場。「案内所に来られる方からは、よくスタッフが『フレンドリーでいいね』とお褒めの言葉をいただくんですよ。特に指導はしていないのですが、対応上手なスタッフが揃っています」とニッコリ。

こちらが、定山渓観光協会マネージャー 橘真哉さん

個人客が増加。日帰り入浴の利用者が多い、市民に愛される温泉

ひと昔前までは、紅葉の季節に行われる社員旅行・観楓会(かんぷうかい)など、団体ツアーでの利用が圧倒的だった定山渓温泉ですが、このところは個人客が国内・海外ともに非常に増えているそうです。

「あるリサーチによると、北海道の温泉に宿泊した人数は1位が登別温泉、2位は定山渓温泉です。ところが、宿泊と日帰り入浴を合わせた温泉の利用者数だと、定山渓温泉が道内1位なんです」

つまり、団体旅行が減っても、札幌市民をはじめ、道内の利用者が多いということ。札幌市民にとっては、車で1時間(南区の人なら20~30分)という距離に、豊富な湯量を誇る、泉質の良い温泉があれば、何度でも足を運びたくなるものです。

「ちなみに、みなさんが温泉に入るときに払っている入湯税がありますよね。その各自治体に納める入湯税は、全国で箱根が不動の1位ですが、コロナ前までは札幌がそのあとを追って、2位、3位だったんです」

こちらは、新緑の定山渓。四季折々、どの季節も素晴らしい景色です

人口数千万という東京圏からお客が訪れる人気温泉地・箱根温泉郷に次いで、定山渓温泉が2位の座を占めていたことからも、それだけ、地元の人たちに愛され続けてきた温泉であることがあらためてよく分かります。

自然を生かしたアクティビティなど、温泉以外の魅力もたっぷりの定山渓

「定山渓の魅力は、今や温泉だけではありません」と橘さんは話します。

国立公園に位置するこのエリアは、豊かな森と水資源に恵まれた自然の宝庫。夏は、八剣山(はっけんざん)の登山やハイキング、豊平川でラフティング、カヌーができるほか、冬はパウダースノーが自慢の札幌国際スキー場でスキーやスノーボードを、森の中ではスノーシューなど、多彩なアウトドアスポーツが楽しめる場所です。果物狩りや乗馬といったアクティビティもあり、幅広い年齢層が楽しめるのもポイント。

「日常から離れてリフレッシュできる場所として、少しずつ知られるようになってきましたが、定山渓エリアをもっと利用していただけるよう、私たち観光協会は積極的にPR活動を行い、訪れてくださった方たちに気持ちよく過ごしていただけるよう環境の整備を進めています」

2023年には、アクティビティのツアーデスク、ドッグランのある無料の屋外テラス、レストラン・店舗などを備えた施設「心の里 埜のてらす(ののてらす)」もオープン。ほかにも個性的なカフェやスイーツ、パンなどのお店が次々にオープンしています。

「心の里 埜のてらす」では、温泉以外の定山渓ならではの体験を提供します

「ホテル経営者の代替わりが始まってきた近年、より一層、定山渓を地域として発展させようという意識が地域全体で強まってきました。そこで、定山渓を訪れるお客さんに、温泉だけでなくこの恵まれた自然を通じてさまざまな体験をしてもらい、積極的にホテルの外も歩いてもらおうという考えに至りました」

ホテル経営者同士が連携し、定山渓という地域の魅力づくりを行っていこうと一致団結。400匹の鯉のぼりが豊平川の上を舞う春の風物詩「定山渓温泉渓流鯉のぼり」、自然を生かした美しいイルミネーションやプロジェクションマッピングの「定山渓ネイチャールミナリエ」、無数のスノーキャンドルが灯る「雪灯路(ゆきとうろ)」といった数々のイベントも、訪れた方たちに喜んでもらうことを目指し、経営者の人たちが自主的に企画したイベントなのだそうです。

6月〜10月末まで開催される、宿泊者向けイベント 「JOUZANKEI NATURE RUMINARUE」もすっかり定着

横の連携が強まったきっかけは、2018年の北海道胆振東部地震による数日間のブラックアウト。定山渓の温泉街では翌日の朝に電気がいち早く復旧したため、あるホテルでは無料で温泉を開放し、SNSで告知しました。それを機に、定山渓温泉旅館組合の経営者たちが集まって話し合い、「地震で困っている道民に、心も体も元気になってもらおう」と、全施設の入浴を半額で利用できる日帰り入浴キャンペーンを実施。同月の日帰り入浴客数は過去最高を記録したそうです。

ゼロからのスタート。周りに支えられた分、その恩返しをしていきたい

さて、橘さんはどういった経緯で定山渓の観光協会に入られたのでしょうか。橘さんは生まれも育ちも札幌ですが、観光協会に入る前は、定山渓にはそれこそ社員旅行などで数回訪れた程度だったそう。大学でインテリアデザインを学び、家具設計の会社で2年間働いた後、関西へ。しかし、やはり地元で働きたいとUターンして札幌の土木設計会社に入社。同じ設計でも計算を重ねていく土木設計は、家具の設計とはまったく別ものでしたが、「元々新しいことに取り組むことが好きな性格なので、サイン、コサイン、タンジェントも分からない文系でしたが、一生懸命学びました」と笑います。仕事にも慣れ、順調に働いていましたが、40歳という年齢を目前にして迷いが生じます。

「ちょうど人生の分岐点とでも言うのでしょうか。自分のこの先が見えてきて、ずっとこの会社でいいのかなと思ったんですよね。そんなときに、定山渓温泉の関係者の方から『観光協会で働かないか』と声を掛けられました」

観光に関してはまったくの未経験。それでも、新しい世界で学ばせてもらおうと定山渓観光協会に飛び込みます。

「39歳でゼロからのスタートというハンデもありましたが、素直な気持ちで仕事に取り組んでいたら、定山渓温泉のみなさんに受け入れていただくことができました。また、学ぶことが好きなので、アドバイスや指摘をもらえると、自分の成長につながると思えて、うれしかったですね」

そのころ、ホテルの若手後継者や施設従業員の有志たちによる青年部が、観光協会内に結成されたことも橘さんにとってはプラスでした。

とっても親しみやすい、観光協会の萬谷さん。

「定山渓という地域をより良くしていこうと意欲に燃えた青年部の人たちが、私と旅行会社との橋渡しにひと役かってくれたり、目の前で私の顔を立ててくれたりと、各所との繋がりを構築する上で、強力なバックアップをしてくれました。観光業界のこともいろいろ教わりました。あのころは、いつも『頑張れよ』と声を掛けていただいて、ありがたかったですね」

あれから10年以上経った今、「当時青年部だった皆さんは、経営者側に。本当に皆さん人格者で、今も一緒に楽しく仕事をさせてもらっています。私がこの仕事をずっと続けていきたいと思っているのは、定山渓の地域発展に貢献したいという思いもありますが、もっと言えば、応援してくださった経営者の皆さんのお役に立ちたい、そんな気持ちも強くありますね」と続けます。

また、橘さんのこれまでの経験と自身の強みが、観光協会のマネージャーという業務で生かされている場面も多くあるようです。

「雪灯路(ゆきとうろ)」イベントは、1月下旬〜2月にかけて開催。この時期ならではの幻想的な空間を是非体験してみてください

「経営者の方々が集まって企画したことを、外に発信していくのが観光協会の役割のひとつ。これまで、さまざまな設計・デザインを学び、仕事にしてきましたが、物事をデザイン、形にすることが自分でも得意かなと思っています。私は元々客観的、俯瞰的に物事を見るところがあり、定山渓がどのように外から見られているか、どう発信していくべきかが自然に分かるように思います。10年以上勤め、この土地にも慣れてきましたが、そういった視点は今も意識するようにしてします」

定山渓は、都会と自然の両方を満喫できる贅沢な場所

プライベートでは、音楽鑑賞からレーシングまで、書ききれないほどの趣味を持つ橘さんですが(奥さんと知り合ったのもサーキット場だとか!)、今は山登りやSUP(サップ)など、定山渓でアウトドアを楽しんでいるそう。

「定山渓ダムの貯水池である『さっぽろ湖』が実は穴場で、とてもきれいなんですよ。あと、カヌーでしか行けないんですけど、『舞鶴の瀞(とろ)』という渓谷に囲まれたところが、ものすごく良い場所なんです。『ここも札幌市なんだよなあ』と、不思議に思いながらカヌーを漕いでいます。アウトドアなど、いつもと違う非日常的な空間で過ごすことは、人が生きていくうえで意外と大事な要素なのではないかと私は思っています」

橘さんお気に入りの場所。舞鶴の瀞(とろ)。

橘さん自身は南区の地下鉄駅近くの自宅から車通勤をしているそうですが、「ホテルのスタッフは定山渓に住んでいる人も多く、よく考えてみたら、国立公園の中に住めるなんて、定山渓ってすごい場所ですよね」と話します。「空き時間や休日には、職場近くで手軽にアウトドアを楽しめ、温泉にも入ることができてしまう!めちゃくちゃ贅沢ですよね。これは定山渓で働く大きなメリットだと思います。充実した暮らしができますよ」と続けます。

都会と自然の両方を身近で満喫できるのは、何よりも贅沢なのかもしれません。また、新しいショップなども増えている定山渓エリア。これからも目が離せません。

定山渓のアイドルであり、PR隊長の「かっぽん」とツーショット
橘真哉さん

一般社団法人 定山渓観光協会 マネージャー

橘真哉さん

北海道札幌市南区定山渓温泉東3丁目

TEL. 011-598-2012

定山渓観光協会公式サイト

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