メイクアップアーティストのHARUKAさんは、メイクサロン「MAKEUP SALON PUNON(プノン)」を経営。さらに、オリジナルのメイクブラシのプロデュースや、登録者数13万人を誇る自身のYouTubeチャンネルでメイク動画の配信をするなど、多岐に活躍しています。このさまざまな活動の芯にあるのは「メイクで人に喜んでもらうこと」だと、HARUKAさんは話します。その言葉に込められた強い想いを伺いました。
高校生で抱いた夢を実現し、美容の道へ
小さい頃は、物静かでおとなしい子どもだったと語るHARUKAさん。6歳の頃にクラシックバレエを始めてから、頑張る強さを身につけたといいます。
「母の勧めもあり、クラシックバレエをはじめることにしました。その他にも、ピアノやスキーなど、ほかにもいろいろな習い事をしていましたが、バレエだけはずっと続けていました。ほぼ毎日レッスンがあって大変でしたが、そこで継続的に頑張る力が培われたと思います」

中学生になってからも、人前に立って目立つのは苦手だったと話します。一方で、その頃から少しずつおしゃれやメイクに興味を持ち始めたそう。高校生になると、将来は美容部員になりたいという夢を持つようになり、美容の専門学校に進学することを決めました。
「進学コースにいたこともあり、先生方からは大学進学の選択肢も提案していただきましたが、両親はいつも私がやりたいと思ったことは尊重し応援してくれていたので、美容専門学校に進学することを決めました」
美容の専門学校に進学したHARUKAさんは、卒業後、大手化粧品メーカーに美容部員として就職。3年後には別のメーカーに転職し、さまざまなコスメブランドの美容部員を経験します。このメーカーでは、札幌初上陸のコスメブランドの立ち上げ時に、メンバーとして選出されるなど、確実にキャリアを積んでいきました。
「当時は若さも手伝って、美容に関しては誰にも負けたくないという気持ちがありました。社内のメイクコンテストでも絶対一番になる!と、強い気持ちで挑んでいました。美容だけは頑張りたいという気持ちが強かったんだと思います」

そして約8年ほど美容部員の仕事を続けるうちに、「30歳までに起業したい」という思いを持つようになります。
「女性が多く活躍している職場だったので、周りに育休を取得されたり、時短で働いたりしている先輩がおり、私もライフステージの変化に合わせて働き方を変えていきたいと思っていました。でも、私の場合は産休育休を取りながら会社で働き続けるのではなく、独立しようという方向に考えたんです」
「それに…」と、HARUKAさんは続けます。
「私は、コスメを販売することも好きでしたが、お客さまにメイクをする方がより好きだと気づいたんです。でも美容部員は販売がメインで、お客さまにメイクをするときはあくまでもメイクアドバイスの一環。時間をかけて対応できないんです。もっと、一人一人の方のお悩みに沿ったメイクに仕上げて、お客さまに満足していただきたいと思うようになりました」

自分だけのメイク空間を作るために独立
27歳で会社を退職したHARUKAさん。自分のサロンを持つために動き始めます。実は、独立を考え出したときから、自分のサロンという空間を持ちたかったそう。
「自分の好きな空間を作りたかったんです。美容部員のときに、『人に見られながらメイクされるのが恥ずかしい』と話す方が多かったので、お客さまの顔のお悩みを周りに聞かれずにメイクできる場所を作りたいと思いました。一対一でメイクをすることで、お客さまの悩みをじっくり聞くことができますし、せっかく綺麗になっていただくなら、来るだけで気分が上がるような空間にしたかったんです」
こうして、HARUKAさんは2017年に「MAKEUP SALON PUNON(プノン)」をオープンします。「PUNON」には、韓国語で「桃色に近いピンク」という意味があるそうです。

「私はピンクが好きで、響きも可愛いと感じたんです。韓国語の表記は少し違うんですが、そのままの音をローマ字に置き換えてサロンの名前にしました」
しかし、店舗の経営となると、さまざまなリスクがつきものです。だけど、HARUKAさんはそれほど大きな不安は感じていなかったと話します。
「もちろん不安もありましたが、不安よりもこれからどのように目標を立てていくか考えるのに頭がいっぱいでした。会社員時代はノルマもスケジュールも全て決められていましたが、これからは自分で一から目標を立てなければならないわけですから。最初からうまくいくわけではないですし、今はとにかく頑張るときだと思っていました」

その後順調にお客さまが増え、現在、HARUKAさんの仕事のメインとなるのは、PUNONに来店するお客さまへのメイクアップや、メイク講座です。また、最近は、メイクブラシのプロデュースや販売も始めました。さらに、さまざまなメディアや、Instagram・YouTubeなどでメイクやコスメに関する情報を発信しています。
これだけ幅広く挑戦するのであれば、美容以外のジャンルにも仕事の幅を広げることは考えなかったのでしょうか。
「考えたことはありません。美容以外のことに手を広げてしまうと、今までやってきたことが無駄になってしまう気がしたんです。全部が中途半端になってしまうと思ったので、美容だけに軸を置いていますね」

登録者数13万人のメイクYouTube
サロンを始めてから、SNSに情報を載せる程度で、ほとんど集客らしいことはしていないと話すHARUKAさん。それでも、SNSの情報や口コミを通じて、多くの人が来店しています。札幌だけでなく、帯広や旭川、苫小牧などから来る人も多いそう。中には、東京から旅行に来て、サロンでメイクをしてもらってから観光に出かける人もいるといいます。
「最近は、YouTubeを見ましたと言って来てくださる方が多いんです。推しのライブで北海道まで遠征して、メイクしてからコンサートに行く方もいました。こんなに遠くから来てくださる方がいるとは思わなかったので、本当にありがたいです」
2020年に開設したHARUKAさんのYouTubeチャンネルの登録者数は、現在13万人を超えています。そもそもYouTubeを始めたきっかけはなんだったのでしょうか。

「SNSで、メイク動画を見たいというコメントをいただいていましたが、もともと人前で話すのが苦手だし恥ずかしかったので、なかなか挑戦できずにいました。でも、2020年って区切りのよい年だし、何か新しいことをやってみようということで始めてみました」
とりあえずやってみようと思ったものの、何をどうすればよいのか全く分からなかったというHARUKAさん。いろいろな方法を試しながら、チャンネル開設にこぎ着けました。
「最初はスマホで撮影したものを、アプリで編集してアップしていました。動画を見てもらえるだけでもうれしいと思っていたんですが、登録者数や再生回数が増えるとやりがいを実感してモチベーションに繋がりました。登録者数が1000人に達したとき、もっと画質を上げてメイクを見やすくするために、ビデオカメラやライトなどの機材をそろえたんです。その後、一つの動画が私の動画の中では比べものにならないくらい視聴回数がとても伸びたことをきっかけに登録者さんが急激に増えました」

コロナ禍も、YouTubeに力を入れるきっかけになったといいます。自粛生活が始まり、サロンでの対面メイクが難しくなった中で、動画配信でメイク方法を伝えられるYouTubeは、HARUKAさんにとってもお客さまにとってもうってつけでした。
対面でメイクやレッスンが再開できるようになってきたのはコロナ禍が明けてから。仕事の割合にも徐々に変化が出てきたと言います。
「世の中が動き出して、メイクやレッスンを受けたい方がやっと戻ってきた気がしますね。メイクをしにいらっしゃる方は、パーティー用の華やかな装いに合うメイクをしてほしいという方もいれば、産休明けで社会復帰をする前にメイクのレッスンを受けたいという方もいます。年齢の節目で、今までのメイクを見直したいから教えてほしいという方もいますよ」
他にも、ブライダルシーズンになると、ゲストとして呼ばれた人だけでなく、花嫁さんから結婚式のリハーサルメイクをお願いされることもあるそうで、さまざまな女性がHARUKAさんの元に集まっているのがわかります。

メイクをして喜んでもらえるのが何よりうれしい
「実は昨年、ハワイのブライダルプランナーの資格を取ったんです」
突然HARUKAさんはこう切り出しました。ブライダルプランナー?しかも札幌ではなくハワイで?
「個人的にハワイが好きで、家族旅行で何度もハワイに行きました。その時にハワイでブライダルフォトを撮影している新郎新婦さんを見かける機会が多くあり、私もハワイでメイクのお仕事をしてみたいと思うようになりました。ビーチや教会など、挙式をする場所によってメイクも変わるので、まずハワイのブライダルについてしっかり学ぼうと思いました。色々と調べている中で、ハワイでご活躍されている日本人のヘアメイクさんをSNSで拝見し、思い切って連絡をしました。その後、単身でハワイに行くことを決め、現地で直接お話しを聞かせてもらいました」

HARUKAさんは、帰国後にハワイブライダルプランナーの資格を取得し、サロンのメニューに新しくハワイウェディングプランを追加しました。ハワイで結婚式を挙げる新婦が、到着後にリハーサルなしでメイクをして、結婚式を挙げるのではなく、HARUKAさんの元でリハーサルメイクを行い、納得のいくメイクを完成させ、そのメイクを再現できるようにハワイの担当へ引き継ぎを行うサービスです。
「新婦さんにとって一番大切で特別な日なので、ご満足いただけるメイクとドレス姿で過ごして欲しいです。それにハワイでのウェディングメイクは日本と気候やロケーションが違うので、その部分のすり合わせもできると結婚式の満足度が上がるのではないかなと思っています」
お話を伺っていると、HARUKAさんは夢をどんどん叶えているように感じます。今後は、どのように仕事をしていきたいと考えているのか聞いてみました。

「ずっと続けてきたこのサロンで、より多くのお客さまにメイクをさせていただきたいというのが一番です。そして、こだわって製作したメイクブラシをより多くのお客様にご使用いただき、メイクの仕上がりの違いを実感していただきたいです。ハワイウェディングに関しては、本番当日のメイクを仕上げさせていただきたい気持ちもありますが、今は日本でメイクを提案することしかできないので、いずれ実現させたいです」
ワクワクする夢ですが、さらに忙しくなりそうです。スタッフを増やす予定はないのでしょうか。
「さまざまな方とのつながりを増やしていきたいとは思いますが、現在はメイクをするスタッフを増やすことは考えていません。例えば、サイトの管理や通販の発送などの作業はお願いできたとしても、メイクは自分の作品なのでほかの人が同じ仕上がりにするのは難しいと思います。自分なりのこだわりがあるので、自分が綺麗だと思えるメイクを、自分の手で作り出したいと思っています」

HARUKAさんにメイクをしてもらったお客さまの中には、うれしさのあまり泣いてしまう人もいるそうです。
「『今までメイクを諦めていたのに、こんなに変われるなんて思いませんでした』と言いながら泣いて喜んでくださる方が何人もいらっしゃるんです。思わずこちらまでもらい泣きしそうになるくらいうれしいですね。『アプリで加工したのかと思うくらい変わって、何度も鏡を見ちゃいました』とメッセージしてくれる若い方もいて、ご満足いただけてよかったという気持ちになります」
札幌は暮らしやすくて居心地のよい街
お客さまから依頼されれば、出張でメイクをしに行くこともあるHARUKAさん。札幌以外に拠点を置く予定はあるのでしょうか。
「今のところありません。若い頃は札幌を出て挑戦してみたいと思ったこともありましたが、今は札幌が好きです。最近、周りの友達とも話すんですが、このちょうど良さが居心地良いんだと思います」
どのようなところに居心地の良さを感じているのかも聞いてみました。

「暮らしやすいところです。人が多過ぎないし、おいしいものがたくさんあります。それに、気候もいいですよね。私は、寒いのが苦手なので毎年冬になるとすごくつらいんですけど、暑すぎずジメジメしていなくて過ごしやすい夏の札幌が大好きなんです」
最後に、メイクアップアーティストを目指している若者にアドバイスするとしたら?
「メイクが好きであることが一番大切だと思います。また、メイクにはさまざまなイメージのジャンルがありますので、まずは幅広く学びながら、徐々に自分の得意なジャンルや好きなメイクを知っていけるといいのかなと思います。学びに終わりはないので、私もまだまだお勉強中ですが、時代に合ったメイク方法、情報や知識を収集していくことも必要だと思います。大学や短大を卒業して美容の道に進んでいる方もいます。私の場合は専門学校を卒業したので、基本的な美容知識があると、入社後すぐに、お客さまに対してプラスアルファのご提案ができたことは良かった点だと思います。もちろん、働きながら学ぶことも多いですし、実際にお客さまのお顔を触らせていただくのが一番の練習になりますが、やはり先に基礎をしっかり学んだことが大切だと思いました」
HARUKAさんの、美容への一貫した情熱と揺るがない軸を感じるインタビューでした。学生時代からメイクに魅了され、美容部員として経験を積み、独立後も自身の理想のメイクを追求し続ける姿勢はとても印象的です。これからも、メイクによってたくさんの人を輝かせ続けてほしいと思います。
