赤茶色の壁が特徴の岩佐ビルは、北海道札幌市の景観遺産指定を受けている歴史ある建物です。このビルの1Fにオフィスを構えているのが、株式会社GEAR8。ウェブディレクションチームとして、札幌を中心に活動している会社です。今回はGEAR8から、Webディレクターの石岡朋樹さんとエンジニアの高橋匠さんに、この職種を目指すことになったきっかけや仕事内容についてお話を伺いました。
異業種からWeb業界へ。
Webディレクションという、普段聞き慣れない言葉に興味津々の取材班。一般的にWebディレクションとは、Webサイトを制作するにあたって、クライアントとのやりとりやサイトの企画、デザイナーなどへの指示を円滑に進行させることが主な業務と言われています。
しかし、GEAR8流のWebディレクションはまた違うのかもしれない…と思い、まずはWebディレクターの石岡さんにお話を伺うことにしました。
石岡さんは北海道の東側にある約16万人が住むマチ、釧路市出身の札幌育ちで、小中高と札幌市内の学校に進学。大学進学も札幌市内と聞いていますが、クリエイティブな仕事に就いているのでやはりデザイン系の大学出身なのでしょうか。
「建築士になりたかったので、北海学園大学の建築学科へ進学しました。勉強に励みましたが、数学がどうしても苦手で建築士になることは諦めることに…。それでも建物や家は好きだったので卒業後は、不動産会社に就職します」
入社後の配属先は、営業でした。実は石岡さん、人と話すことがあまり得意ではなく、配属当初は接客になれるのが大変だったそう。少しずつ業務になれていくうちに、お客さまとの会話も楽しめるようになり、営業も板についていきました。ところがあることをきっかけに、Web業界へ興味を持ちます。
「家族でカフェを経営している友人と話していたら、『お店のWebサイトを新しくしたい』という話になったんですよね。それまでWebサイト制作をしたことはなかったけど面白そうだなと思い、引き受けたんです。1人で制作を始めて、デザインやコーディング(プログラミングによるWebサイト構築を指します)の勉強をしていくうちに、その奥深さに徐々にハマっていきました」
石岡さんは、独学でWebの勉強を進めていくうちに「Webサイト制作を仕事にしたい」という想いが強くなっていきました。そこで不動産業界に別れを告げ、会計事務所のWeb事業部へ転職します。でも、なぜWeb制作会社ではなく、会計事務所を選んだのでしょうか。
「制作会社だと、例えばデザインのみを担当して1つの工程をきわめるイメージがあったんですよね。僕は、Web制作工程の1つだけを経験するのではなく、ひとりでディレクションからデザイン、コーディングまでWebサイト制作の全てを担当できる場所を探していました。会計事務所はWeb事業部だったので、Web制作にまつわること全てがここに集約していて、僕にはすごく魅力的だったんです」
Web事業部では、ワンストップで制作が行われていました。自社のWebサイトを運用しながら、会計事務所に相談があった起業家のWebサイト制作も行うため、常に忙しい部署だったそうです。制作する人数も少なく、先輩方も多忙をきわめていたため、石岡さんは実践と独学で、技術と知識をつけていったと言います。
「ウェブセミナーや本で、Webについて勉強することが多かったですね。勉強して知識がついていくと、『様々なデザイナーやエンジニアと一緒にサイトを作ってみたい』という気持ちが芽生えていきました。ただ自分のスキルがどこまで通用するかわからなかったので、Webの勉強も続けながら転職活動を行っていくうちに、GEAR8と出会います」
GEAR8ならではのWebディレクション。
GEAR8へ求人応募するにあたり、コーポレートサイトやSNS、取材記事のすみずみまで見たと石岡さんは笑みを浮かべます。制作物のクオリティの高さはもちろんスタッフの仲の良さや、Web制作について勉強会を行う様子などを見て、社内雰囲気の良さを感じ、応募へ。
「書類選考、面接、採用課題とステップを踏んで、Webディレクターとして入社が決まりました。入社後は、技術と知識の高さに驚くことばかりでしたね。あと、入社前はひとりでサイト制作を行っていたので、自分が想像している以上のサイトができあがることはなかったんです。入社してからは、デザイナーやエンジニア、カメラマン、コピーライターなど、その道のプロと仕事するようになったので、クオリティが圧倒的に違い、サイトが完成するたびに驚きや感動があります」
一般的なWebディレクションは冒頭で述べた通り、サイト制作を円滑に進めるのが役割ですが、GEAR8流のWebディレクションを石岡さんに聞いてみると…。
「一連のディレクション業務はご説明していただいた通りですが、ディレクションの最初の工程であるクライアントへのヒアリングを重視しているところが、GEAR8らしいのではと思いますね。その話の中からコンセプトを固めることで良い提案ができると思うので、ヒアリングには時間をかけて、悩みや解決したい部分を明確にし、『GEAR8に任せても大丈夫』と思ってもらえるような信頼関係を築くようにしています」
ディレクション業務の中で、意外にも異業種の不動産会社での経験が活きていると石岡さんは言います。
「不動産会社で働いていた時にも、毎日お客さまに提案していたので、お客さまが求めていることや立場になって考えるという部分では、少し近いのかなと思っています。例えば、階段しかない物件であれば、高齢の方には不向きですよね。深く考えることでお客さまに喜んでもらえた経緯があるので、今もクライアントの立場になって深く考えるというのは大事にしています」
相手の立場に立つことができたとしても、Webディレクターには生まれ持ったデザインセンスのような感覚の良さも必要になる気がしますが…。
「センスはアーティストの人は必要だと思いますが、僕たちWebディレクターに必要なのは情報や知識だと思います。Webディレクターは司令塔なので、サイト制作に関わる工程全ての情報を把握していないといけません。そのためには知識もないと、クライアントからの質問に浅い話しかできない。なので、貪欲に勉強できる人が向いていると思いますね」
チャレンジ精神旺盛のエンジニア。
続いて、エンジニアの高橋さんにお話を伺います。
高橋さんは、北海道のほぼ中央に位置し、旭山動物園、ものづくり、食、文化や景観などの自然と都市機能が調和する、北海道旭川市出身。小中高と旭川で過ごし、大学進学を機に、札幌市の隣にある約12万人が住むマチ、江別市へ引っ越しました。
「江別にある北海道情報大学の情報メディア学部で、グラフィックデザインやWebデザイン、コーディング、ゲーム制作など幅広く学びました。就職を意識し始めた大学3年生の時に、愛知県のWeb制作会社で夏に3日間インターンしたのですが、仕事内容よりも気温が暑すぎて『僕は北海道以外住めない』と思い、北海道でインターンできる会社を探すことに」
スノーボードやキャンプなど、高橋さんはアウトドアな趣味が多く、道外に住んだら気軽に楽しめなくなるのも嫌だったそう。
「ちょうどその時に、大学にGEAR8が特別講義に来てくれたんですよね。仕事内容やリアルな制作現場の話が面白くて『この会社でインターンを体験したい』と、登壇後にGEAR8代表の水野さんに、その場で声をかけてインターン募集をしていないかを聞きました」
ラッキーなことにちょうどインターン募集中だったため、長期インターンとしてGEAR8に入社。しかしこの時高橋さんは、エンジニアではなくWebディレクター志望だったとか。
「いろんな人と意思疎通を図りながら、ひとつのものを作り上げるディレクターという立場が魅力的に見えたんですよね。でも、実際にインターンを始めてディレクション業務に携わってみたら、僕には向かないなと思い諦めました(笑)あと当時コロナ禍だったので、進行していた案件が急にストップになったりして、ディレクション業務に関われる機会が少なかったんですよね。今思うと、あまりタイミングがよくなかったのもあったかもしれません」
高橋さんは「エンジニアとしてGEAR8で頑張ろう」と、一念発起。ただGEAR8でインターンをしながらも、他社の短期インターンや企業訪問を行ったりするなど、いろんな情報を収集しながら、就職活動を進めたそう。
「最終的に就職は、GEAR8に決めました。『やりたい』と言ったことにあまりノーとは言われない社風なので、自分が勉強したプログラミングの知識なども実践で使わせてもらえるんですよね。その分、誤作動が起きないかや安全性をしっかり確認する必要はあります。だけど、エンジニアの世界は技術の移り変わりが早いので、チャレンジさせてもらえる環境は心惹かれました」
正社員として入社した当初は、インターン時から継続していた簡単なコーディングから始まり、スキルが身についてきた頃から、複雑なコーディングも担当するようになりました。そして現在は、コーディングのテクニカルディレクションも務めるまでになっています。
「テクニカルディレクションは、プログラミングの技術面を指揮することですね。例えば『Webサイト上に画像を表示させて、5秒後に違う画像を表示させるならこのプログラミングにしましょう』など、自分が持っているプログラミングの知識で使いやすく見やすいサイトにするためのアドバイザーに近いかもしれないです。社内でディレクターたちと案件についてミーティングしながらアドバイスし、Webサイトに実装するまでが僕の役目です」
今年で入社4年目を迎える高橋さんに、エンジニアを続ける上で役に立つ知識や経験を教えてもらいました。
「大学時代で言えば、Web以外の授業もとっておけばよかったなと思いました。仕事の中で意外とWeb以外の知識から、ヒントをもらうこともあるので視野は広い方が良いですね。あと、積極的に人と交流することもおすすめです。僕は札幌で開催されるコーディングのセミナーなどに参加し、エンジニア同士の情報交換や業界の最新動向をリサーチしています。未経験者や学生関係なく参加できるイベントもあるので、エンジニアになりたい人は参加してみるといいかもしれないですね」
仕事と遊びと、これからのこと。
ここでWebディレクターの石岡さんにも同席してもらい、おふたりそれぞれが、仕事のどこに面白さを感じているのか伺いました。
石岡さんは、少し考えながら…。
「僕は制作スケジュールの調整、ですかね。案件によっては、スケジュールに関わる人数が5人以上になることもあり、全員がスケジュール通りで動けているかなどを把握しなければなりません。調整の仕方で、Webサイトのクオリティも変わるので僕も力が入ります。ここがきっとWebディレクターの腕の見せ所なんじゃないかなと思っていますね」
高橋さんは、真っ直ぐな瞳でこう教えてくれました。
「Webサイトの感想を身近な人から聞けるのが、面白いです。僕が制作したことを知らない友人から『あのサイトかっこいいよね』と褒めてもらうことがあって…嬉しかったですね。普段はパソコンの前で黙々と作業しているので、直接Webサイトの評価を聞くことができると、モチベーションアップにも繋がっています」
おふたりの充実した仕事ぶりが、表情からも伝わってきます。多忙な日々の息抜きは、どのようなことを楽しんでいるのかも聞いてみると…。
「キャンプですかね。僕はインドア派だったのですが、匠くんを始め社内の人がキャンプ好きな人が多く、影響を受けています(笑)。あとは石狩で行われるRISING SUN ROCK FESTIVALも好きです。暑すぎず心地よい風の中、音楽を聞けるのは北海道の醍醐味ですよね」と石岡さん。
多趣味な高橋さんも、真っ先に「キャンプ!」とあげてくれました。
「1年を通してキャンプに行ってますね。お酒を飲んで、昼寝して、何も考えないでぼーっとするのが好きです。最近はテニスの社会人サークルにも入って、週末はたくさん身体を動かしています」
取材の最後に、これからやりたいことを聞いてみると…。
石岡さんは「1ヶ月ほど他の地域へ行き、リモートで仕事をしてみたい」と、高橋さんは「新しいプログラミングを試し続けたい」と教えてくれました。おふたりが躊躇せずにこれからのことを断言する姿からは、やりたいことが明確で、今の職種で目指す形が見えているのだと感じました。
これからも、その未来に向けて努力するおふたりの活躍を楽しみにしています。