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設備と品質へのこだわり。道内で一番シールを刷っている「北海シーリング」

2024.11.7

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スーパーに並んでいる商品を手にするとき、私たちはパッケージの色やデザイン、形を見て、気になるものに無意識に手を伸ばしていますよね。商品の売上にも大きく関わるといわれるデザイン。そのパッケージデザインで重要となってくるのがシールの存在です。貼られているシールが安っぽいものや発色が美しくないと、いくら優れたデザインであったとしてもそれだけで商品価値がグッと下がってしまいます。ほかにも、意識して見まわしてみると私たちの暮らしのいたるところにシールが存在しています。ワインボトルのエチケット(ラベル)も、好きなアーティストのステッカーも、食品の裏に貼ってある表示もすべてシールです。このシール印刷に、高い技術とこだわりを持って40年以上取り組んでいる会社が札幌市西区にある「北海シーリング」です。

道内トップクラスのシェアを誇るシール印刷の会社「北海シーリング」

西区発寒の鉄工団地通から少し入ったところにある「北海シーリング」。シールラベルの印刷物を専門に製造する会社です。食料品、飲料、土産物、日用品などのパッケージに使われるシールを主に製造しているほか、粘着物の特殊印刷や加工製品も扱っています。

現在、道内のシール印刷においてトップクラスのシェアを誇る同社は、昭和56年(1981年)に創業。積極的な設備投資を行い、デジタル印刷や小型凸版印刷機を用いた小ロットの印刷から、道内では非常に希少な大型の凸版高速輪転機を導入した大量印刷まで幅広く対応しています。

「とにかく品質にこだわり続けてシール印刷に取り組んできました。そこだけは譲れないですね。たかがシールと思われるかもしれませんが、エンドユーザーの方たちに最終的に手に取ってもらえる商品になるか否かにも大きく関係してくるんです。お客さまの売上を左右するものである以上、私たちは品質を落とすわけにはいきません。そこの部分をお客さまはもちろん、消費者の方たちにも理解し、シール印刷について知ってもらえたら嬉しいです」

そう語るのは、同社代表取締役の有原常貴さんです。創業3年目に技術職で入社し、現場を長く経験。製造のトップを経験したのち、営業、経営に携わるようになったそう。次に、社長と会社の歩みについて伺っていきましょう。

代表取締役の有原常貴さん

次から次へと入ってくる大量の仕事。試行錯誤しながら技術力をアップ

有原社長は札幌出身。機械いじりやモノづくりに興味があり、中学生のころは自転車を自分でカスタマイズする少年でした(ちなみに今もオートバイや車をカスタマイズするのが趣味だそう)。好きが高じて工業高校へ進学し、卒業後は倉庫会社に入りますが腰を痛めてやむなく退社。仕事を探していた際、求人誌に印刷オペレーター募集と書かれているのを見て応募します。

「機械に触れられるならいいなと思ったんですよね。モノづくりも好きでしたから、ちょうどいいかもと入ったんですが、毎日大変でしたね」と苦笑。当時、印刷機は3台ほどで、従業員も7、8人だったそう。創業から3年ということもあり、当時の社内で技術指導できる人は存在せず、「先輩からは気合いでなんとかしろという精神論を聞かされて(笑)、とにかく手探りで試行錯誤しながら技術を身に着けていく感じでした」と振り返ります。

「何もないところからのスタートでしたが、好きな機械をいじりながら自分でやり方を見つけていくのは案外面白かったんですよね。あとは、とにかく誰にも負けないぞという悔しさがバネになって頑張れたところもあります。そして、自分が手がけたシールを貼った商品がスーパーなどに並んでいるのを見ると、やっぱり嬉しいんですよね。だから続けられたのだと思います」

当時はバブルの絶頂期、仕事は次々と入ってきました。「仕事をやってもやっても終わらなくて、印刷機も社員も毎年増えていくけれど、それでも間に合わないという状況でした。ちょうど入社から4、5年経ったとき、2交代のシフト制が導入されて、昼夜稼働するようになりました」。全道各地に顧客が増え、会社は急成長を遂げます。

工場で印刷されているシールにはスーパーなどで見たことのあるものがたくさん!

「一般的な印刷というのは工程が別々で、作業するスタッフもそれぞれなんですが、シール印刷は機械1台で裁断まですべて行えるんです。そのため短期間で納品できるという強みもあり、仕事は次から次へと入ってきました」

シールでカラー印刷は難しいとされた時期もありましたが、1990年代に入ると印刷の技術が進歩し、シールでも多彩なカラー印刷の対応が可能になります。カラー写真なども対応ができるようになり、さらに仕事の幅が広がります。

有原社長は、「大量生産に対応できる輪転機も導入して、量産体制を整え、2交代制でフル稼働していましたが、それでも仕事が次から次へと入ってくるので作業が追い付かず、休日返上で仕事をしていました。若かったこともあって遊ぶのも忙しくて(笑)、充実していましたが大変でしたね」と当時を振り返って笑います。

業績悪化の中で社長交代。社員に対して現状を正直に話し、社内改革に着手

入社から10年経ったとき、製造部のトップになった有原社長。これまで技術面の向上に力を注いできましたが、製造現場の全体を見るようになってからは、採算が合うかどうかなど、経営にも関わるようになります。

「利益のことも考え、自分の采配で製造現場のコントロールができるようになり、ビジネスの面白さがだんだん分かるようになりました。当時は、ちょうどWindowsやMacなどパソコンが印刷業界にも導入されはじめたころ。業界も大きな変革期を迎えていて、私も自分のキャリアアップについて考えるようになり、独立することも視野に入れ始めていました」

30年近くにわたり、長く工場を支える輪転印刷機

そんな矢先、先代が体調不良をきっかけに引退することになり、諸先輩たちに後継者として声がかかります。ところが、ちょうどバブルが終焉を迎え、業績は悪化し始めていました。

「それまで黙っていても仕事が次々入っていたので、営業力が足りなかったことも業績不振に響いていました。後継者に指名された先輩や先代から声をかけられた人たちはこの状況で引き継ぐことをみんな拒否し、最後の最後、自分のところに話がおりてきました」

現場の仕事のことが分かっている自分が社長になれば、今いる社員のみんながきっと力を貸してくれる。そうすれば建て直す自信はある。有原社長の中にその算段はありました。独立も考えていましたが、会社に残る覚悟を決め、社長を引き受けることにします。ちょうど39歳のときでした。

「10年かけてあらゆる見直しをかけようと計画を立てました。ちょうど機械化が進み始めていました。今のうちの会社に何の機械が必要かを見極め、全国的に見ても早い段階で機械の設備投資を進め、人員も増やして営業力アップをはかり、自分もこれを機に営業として外を回りはじめました」

外に出てみて分かったのは、お客さまから自分たちがどう見られているかでした。電話の応対、事務所の雰囲気など、決していいとは言えないと気付いた有原社長は、社員教育や事務所の環境整備を行い、お客さまが持つマイナスなイメージを払拭することにも力を注ぎ、クリーンな会社にしようと努めます。

「お客さまがうちに直接来ることは少ないけれど、『いらっしゃいませ』と明るくしっかり挨拶するって大事だなと。電話対応も同じで、丁寧で損はないですからね。それで、マナー講師の方を呼んで社員向けの研修をしたり、事務所に入った瞬間明るくキレイに見えるようにパーテーションなどを作り直したりしましたね。あとは、工場にいるけどコミュニケーション能力が高い人材は営業や事務部門の受付業務に挑戦してもらうなど、適材適所の配置も考えました」

そうした改革に対して社内からの反発はなかったのかを尋ねると、「社長になったとき、正直に社員みんなに話をしたんです。うちの会社は傾いています、このままじゃ危ないですって。だから、危機感を持ってみんなで頑張って変えていきましょうって話をしました」と振り返ります。みんなで危機を共有できたことがプラスに転じ、「お客さまからは、雰囲気が良くなったね、仕事が頼みやすくなったよと言われることが増えました」と有原社長。

工場でもコミュニケーションを取りながら作業を進めていました

震災を機に需要が激減。その中でも自分たちの強みを生かした提案を

社長就任から10年は計画通りに進めていくことができたと有原社長。ところが予想もしていなかったことが起こります。2011年の東日本大震災です。

「震災があって、世の中がガラッと変わったと感じました。イベントもすべて中止で、自粛ムードが漂い、そのあともイベントなどの数は減ったまま。イベント関連で使うステッカーなどの仕事がすべてなくなってしまいました」

積極的に営業をかけ、新規顧客の獲得に努めますが、「廃業するお客さまが増えたりと、いくら新規の仕事を取ってきても、仕事を辞めるお客さまの数のほうが多いという状況でした」と話します。取引のある大手メーカーも商品の品目を減らすなど、あらゆるものが縮小していくという状況下で、「時代の流れを読みながら体制を見直さなければと考えて取り組んできました」と有原社長。

「全日本シールラベルコンテスト」や「世界ラベルコンテスト」などで数々の賞も受賞しています

「少量でも中身や品質を重視する企業が増えている一方で、ときには量産も必要。そのような中、自分たちの強みは何かを考えたとき、うちは新しい機械や最新の技術を取り入れる努力をこれまでずっとしてきました。デジタル印刷機や小型印刷機を導入し、小ロットにも対応できるようにしながら、30年以上前に導入した大型の輪転機は、今も現役で稼働しているので大量受注の対応も可能。このように設備面が充実しているのはもちろん、道内で一番シールを印刷しているという自負と技術力の高さもどこにも負けません。そういう意味でお客さまのあらゆる要望に応えられるのが強みのひとつだと考えています」

こうした強みを生かし、お客さまのニーズを捉えた提案を行っているそう。提案の際には、いかに販促につながるかなどシールを使うことのメリットも含めて丁寧な提案を行っています。

こちらは「パターン箔」という特殊な箔版を使用することで、より多様なパターンの柄が表現できます

働く環境も常にアップデート。社員には仕事を通して喜びと誇りを感じてほしい 

社員の働き方や労働環境に関しても、「時代に応じて常にアップデートさせていかなければ」と有原社長。ここからは、取締役で管理部課長の菅原恵さんにも登場していただき、働く環境などについて伺います。

菅原さんは入社15年目。所属する管理部は、総務、経理、営業や製造の内勤サポート、品質チェックなどを行う会社の重要な部署です。

取締役管理部課長の菅原恵さん

「最初は飲料メーカーに勤務していましたが、経理の勉強をしていた時期を経て、北海シーリングに入社しました。モノづくりに興味があり、モノを生み出す会社に魅力を感じたのがきっかけです。飲料メーカーにいたとき、自社製品をスーパーなどで目にすると嬉しく思っていたのですが、それと同じように自社で刷ったものが世の中に出て、たくさんの人の目に触れるという喜びや楽しさを感じられるのはいいなと今でも思います」

菅原さんが入社したころから風通しは良く、自由度が高い職場だったそうですが、「入社して気になったのが、仕事が属人化している点でした」と話します。そこで、効率良く仕事をするためにもみんなで共有していきたいと社長に提案。「社長はきちんと理由を説明すればダメとは言わない人。とはいえ、突然の変化に抵抗を感じる人もいるだろうからと、一緒に計画を立てながら少しずつ組織を変えていきました」と菅原さん。

営業、内勤、工場と密に連携を取りながら業務にあたります

このように社員の声にも耳を傾けるようにしているという有原社長。1年ほど前から、より風通しのよい環境を整えていこうと、若手社員による月1回の意見交換会を開いています。「毎年新卒の社員が入ってきているので、新人からちょうど入社4、5年の社員を4人ほど集めて、それぞれ思うことや意見を遠慮なく言ってもらっています」と菅原さん。「彼らの話を聞いていると、自分たちも気が付かないような課題やヒントが見えてきます」と続けます。有原社長も「いい意見や案が出ればそれを反映させることも。若手には自分たちの意見が会社の運営に反映されると知ってもらえたらと考えています」と話します。

毎年新卒の社員が入社するという同社。平均年齢が年々下がっているそう。菅原さんにどんな人と一緒に働きたいかを尋ねると、「うちの会社はモノづくりが好きな人たちの集団。管理部や営業部は、製造部のように実際に手は動かさないけれど、新たなモノづくりの仕事を提案、獲得し、より良いモノづくりのサポートを行い、世の中により良い製品を届けるという共通の目標を持って仕事に励んでいます。誇れるものを一緒に世に送り出し、会社を盛り上げたいという気概のある人が良いですね」と教えてくれました。

有原社長は、「子どものころ、シールが好きでした。集めて、貼って、ワクワクしていました。生活に密着しているシールには、まだいろいろな可能性があると思っています。そんなワクワクするような感覚で、もっといろいろなシールやステッカーを提案し、世の中の人にシールの魅力を知ってもらいたいと思います」と話します。「菅原さんが言うように、直接的にモノづくりをしなくても、関わることでモノづくりの喜びを知ってもらいたいし、スーパーなど目に見えるところに自分たちが作ったシールが貼られているのを見ると、誇らしく思えるんです。それがうちの仕事の醍醐味でもありますね」と最後に語ってくれました。

取材後、工場を見学させてもらうと、あらゆる有名食品メーカーの商品シールがズラリ(ここに書けないのが残念ですが…)。確かにこれらをスーパーや店舗で見かけるたびに、自分の仕事に誇りを持てるだろうなと感じました。

有原常貴さん

北海シーリング株式会社 代表取締役

有原常貴さん

菅原恵さん

北海シーリング株式会社 取締役管理部課長

菅原恵さん

北海道札幌市西区発寒11条14丁目1067-4

TEL. 011-665-1271(受付時間 平日 8:30〜17:30)

https://sealing.co.jp/

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