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北海道の価値を未来へ繋ぐ。合同会社デロイト トーマツ

2026.1.12

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大通の4プラ跡地にできた商業施設「札幌4丁目プレイス」。最上階である13階に2025年12月にオフィスを構えたのが合同会社デロイト トーマツです。合同会社デロイト トーマツは、経営戦略策定やM&A・財務、リスク管理アドバイザリーを主軸としながら、BPOの提供、ベンチャー企業や新規事業開発、地方自治体の支援などを行っています。さらに、同フロアにスタートアップや自治体、大学など多様なバックグラウンドを持つプレイヤーの共創を生み出すことを目的とした「Sapporo Social Innovation Hub(サッポロ ソーシャル イノベーション ハブ)」という拠点も誕生。合同会社デロイ トトーマツのファイナンシャルアドバイザリー事業部所属、Design&Brandシニアマネジャーの小田剛さんに、合同会社デロイト トーマツについてやご自身の経歴、Sapporo Social Innovation Hubへの想いなどを伺いました。

世界的に有名な法人が札幌で選んだ場所

合同会社デロイト トーマツは、デロイト トーマツグループの一社です。デロイト トーマツは、「Big4」と呼ばれる世界最大規模のプロフェッショナルファーム4社のうちのひとつ「デロイト」のメンバーファームです。グループには、会計や監査を担う公認会計士をはじめ、税理士や弁護士、社会保険労務士、さらには建築士まで、多様な専門家が在籍しています。

「ルーツは、企業の決算が正しく行われているかを確認する監査法人から始まっています。しかし、時代の流れとともに、経営に関する相談が増えたことで、コンサルティング領域にも事業を広げてきました」

そう話すのは、合同会社デロイト トーマツのファイナンシャルアドバイザリー事業部に所属する小田さんです。

▼こちらが、合同会社デロイト トーマツのファイナンシャルアドバイザリー事業部に所属する小田剛さん。

ファイナンシャルアドバイザリー事業部では、民間企業に対しては、M&Aを中心に、事業再生や新規事業創出のサービスを、国・地方自治体には、政策立案のための調査や政策の地方展開、地方創生のサービスなどを提供しています。

「M&Aがメインですが、いろいろな事業に携わらせていただいています。北海道では、人事や広報といった専門部署を持たない企業も多いので、そうした部分BPOを引き受けることも多いですね」

デロイト トーマツが目指しているのは、企業の売上を循環させるだけでなく、その流れを地域、さらには社会全体へと波及させていくことです。こうした考え方をもとに、さまざまな業界の人々をつなぐ場として、「Sapporo Social Innovation Hub(サッポロ ソーシャル イノベーション ハブ)」というスタートアップ支援拠点の運営もスタートしました。

「多様な業界とお付き合いのある私たちだからこそ、さまざまな業界の方がつながる接点をつくれるのではないかと考えました」

▼Sapporo Social Innovation Hub(サッポロ ソーシャル イノベーション ハブ)

Sapporo Social Innovation Hubの場所に選ばれたのは、札幌4丁目プレイスの13階。合同会社デロイト トーマツの札幌オフィスも、同じフロア内に置かれています。札幌4丁目プレイスは、「4プラ」と呼ばれ、大通地区のシンボルとして古くから親しまれていたエリアが、新たに生まれ変わった場所です。なぜ、この場所にオフィスを構えることにしたのでしょうか。

「この辺りはオフィスが多いですし、古くからカルチャーの発信地として、若い人を中心に親しまれてきた場所です。そうした点でオフィスや人が集まる場所を作るにはインパクトがあると感じました」

現在、オフィスで働いているのは、30代を中心とした約70名のメンバー。業務中はメンバー全員打ち合わせが多く、コミュニケーションを取れる機会は少ないと言います。しかし、ランチはメンバー同士で行くこともあり、ちょうど良い息抜きの時間になるそうです。

「採用にも力を入れていて、人員を増やす予定です。この場所で、腰を据えて働きたいという気持ちを持ってくれる人に来てほしいですね」

▼パリの展示会に参加したときのメンバー。

「10年経ったら札幌へ戻る」、そう決めて東京で就職

小田さんの生まれは札幌。さらに札幌育ちで「北海道が好きだから」という理由で北海道大学に進学し、大学院まで進みました。

子どもの頃は教師や弁護士に憧れていた時期もありましたが、大学では電子情報を専攻。大学院では、情報技術を活用した新薬開発の研究に取り組みました。

「薬の開発には莫大なコストがかかります。たまたま、がんの治療薬を研究しているところから、予算を抑えて開発するためにITを活用できないかという相談があり、新薬開発のためのシミュレーションツールのようなものを在学中は作っていました」

大学院修了後、小田さんは東京のコンサルティング会社へ就職します。

「大学院の研究もそうでしたが、課題を解決することが楽しかったのでコンサルティング会社を選びました。ただ、北海道のために働きたいという思いがあったので、東京で10年間経験を積み、一人前になったら札幌に戻ってきたいと考えていましたね」

その思いを実現させるため、小田さんは10年ほど東京のコンサルティング会社に勤務。そして、北海道に戻って札幌の監査法人トーマツに転職します。札幌へUターンした理由は、就職した時の目標と共に、新しく増えた家族の存在も大きかったそうです。

「ちょうど妻に三人目の妊娠が分かったタイミングだったんです。二人目までは夫婦だけでも見られましたが、三人の子どもを育てるには、近くに頼れる人がいた方がいいと思いました」

しかし、転職から5年ほどがたった頃、小田さんは、戦略策定や助言などのアドバイザリー業務に物足りなさを感じるようになります。自分のやりたいことは、考えることだけじゃなく、それを実現すること。北海道に帰ってきてやりたかったことと現状にギャップを感じるようになった小田さんは、徐々に退職を考えるように。

「退職を悩んでいた時に、デロイト トーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社事業部の役員から、『ニセコ町でやりたい事業がある』という相談を受けたんです。過去にニセコ町の地方創生戦略に関わった経験があったので、最後に役員とニセコ町の町長を引き合わせて退職が良いかなと思っていました」

▼付加価値向上セミナーで登壇した際の小田さん。

北海道のために働きたい。その想いを現実に

ニセコ町の町長を紹介した後、役員に「戦略を実現することをゴールとするため、独立しようと考えています」と伝えた小田さん。

「すると役員はすぐに、『それはうちの会社で実現できるんじゃない?やろうよ、社会実装』と言われたんです。それを聞いて、僕はすぐにデロイト トーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社に移籍することを決めました」

デロイト トーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社の事業の主軸は、M&Aです。一方で、M&Aに限定せず地域で一緒に会社を立ち上げたり、ベンチャー企業の支援、新規事業コンサルにも積極的に取り組んだりしていました。その中で小田さんが配属されたのは、デザイン&ブランドと呼ばれるチーム。未来・社会をデザイン・実装し、ブランディングの力をもって事業や組織を強化・加速させるチームです

「M&Aは、企業のブランドが変わるタイミングでもあるので、その価値をいかに維持するかが大切です。ただ、ブランドの価値は数字としては見えにくいもの。その見えない価値を損なわないようにプロモーションしていくことが、チームの仕事です」

さらに地方自治体の仕事や、札幌が2024年6月に「GX金融・資産運用特区」に指定されたことを受け、デロイト トーマツが持つ知見や情報をもとにGX関連産業に向けた国内外の投資を呼び込むツール作りとプロモーション活動を海外で開始。地元企業の海外進出や、先端半導体工場の立地を契機としたまちづくりを通じ地域住民や企業が一番の恩恵を受けることができる仕組み作りを担う協議会の設立など、まさに小田さんが思い描いてきた「北海道のため」の仕事も。

そして、2025年12月1日にデロイト トーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社はグループ内の他の会社と合併し、合同会社デロイト トーマツとなりました。

「北海道は、産業化という面で弱い地域だと思っています。例えば、おいしい食材は豊富に取れ、それを加工・製造できる企業は北海道に多数ありますが、その商品に付加価値を付けブランディングできる企業は少ない。その課題を解決するために、地域や社会全体をどうデザインしていくかを今後も考えていきたいと思っています」

工場を作って終わりではなく、そこで作られた製品を地域でどう使っていくのか。ホテルを建てるだけでなく、売上をどのように地域へ還元していくのか。「長年、北海道で仕事をしてきたからこそ、そうした課題が見えてきた」と小田さんはいいます。

「単にひとつの企業だけ支援するような部分的な取り組みでは、なかなか根づきません。地域づくりとひもづけてこそ、意味があると思っています」

やりがいと厳しさ。それでも前に進み続ける

企業や地域の支援という仕事は、事業計画を作成して終わりではないと語る小田さん。過去に携わった民間企業の事例を挙げながら、こんなエピソードも教えてくれました。

「最近だと、海外でも事業を展開したいという札幌のパッケージ会社さんのお手伝いをしました。小さな会社なんですが、世界に通用する素敵な箱を作っているんです。フランスで開かれた展示会に同行し、出展準備や現地での商談をサポート。香水や化粧品といった高級品のパッケージを手がける新ブランドの立ち上げにも携わっています」

「事業計画を作った先まで一緒に動いてくれるのは、正直に言うと意外でした」と小田さんに伝えると、「どこまでご一緒できるかは、案件による部分もあります。でも、やりたかった仕事ができているので、私自身もやりがいがあり楽しいです」と自然と目を細めます。

同時に、厳しさを感じる一面も。

「自分たちがやったことの結果が、そのまま自分たちに返ってくる。そこは本当にプレッシャーが大きいですね」

コンサルタントは、時間や単価に見合った価値を提供できているかを常に問われる仕事です。その期待に応えられているかどうかを意識し続けることは、精神的にも大きな負荷がかかるといいます。

「私たちの仕事は、自分がイメージしたことを実現するのではなく、クライアントが実現したいと思ったことを形にすることです。最終的に思い描いた通りの結果を出せたかどうかを判断するのは、あくまでもクライアントです」

コンサルティングを依頼する企業からは、当然ながら成果が求められます。しかし、常に思い通りの結果を出せるとは限りません。そんなときはどうするのか、小田さんに尋ねてみました。

「仮にうまくいかなかった場合は、どこに考えの漏れがあったのかを検証し、次にどう生かすかを考える。その繰り返しです」

案件の規模が大きくなれば、動くお金の金額も自然と大きくなります。中には、億単位のお金が動くこともあるそう。しかし、金額そのものへのプレッシャーは、あまり感じないと小田さんは話します。

「緊張するのは、そこに付加価値を上乗せするときですね。例えば、材料そのものの価格は数十円のものでも、デザインやブランドの価値が加わることで価格は大きく変わります。その見えない価値をつくり出すのが、私たちの仕事です。ただ、その価値が本当に正しいのかという判断は難しい。だからこそ、価値として上乗せさせた金額に対しては、常にプレッシャーを感じますね」

挑戦する人を応援し続けたい

現在、北海道の多くの産業で課題となっているのが、労働人口の減少です。この状況をどう捉えているのか尋ねると、小田さんは「人口が減ること自体は仕方がないこと」とした上で。

「ビジネスのエリアは広げていく必要があると思っています。例えば、北海道の企業が海外と取引をするだけで、ビジネスは生まれますし、雇用も生まれます。そのときに、人が担う部分とITに任せる部分をきちんと分けていけば、人口が減ってもビジネスの可能性はまだまだあると思います」

さらに、こう続けます。

▼札幌・北海道を、テック・エンタメ・クリエイティブで世界をめっちゃおもろくするフェス「NoMaps2025」に「デロイト トーマツ Presents 札幌から始まる、未来を共創するイノベーション拠点」のプログラムで登壇した小田さん。
▼長野県山ノ内町では、環境保全・地域の魅力発信・産業育成を同時にかなえる官民連携の「かおりプロジェクト」を推進しています。本プロジェクトにおいて、デロイトは町からの委託を受け、専門的な知見から商品企画、商品名・ロゴの制作、およびプロモーション活動を包括的に支援いたしました。

「北海道はこれまで、産業化が十分に実現できていなかったと感じています。私たちは、産業化こそが最大のチャンスだと考えているので、それを実現させることが当面のミッションだと思っています」

記事を読んで「小田さんのように規模の大きい仕事がしたい」と、憧れを抱く人も多いと思います。でも、小田さんは「目の前のことにまずチャレンジしてみてほしい」と言います。それは小田さん自身が就職で東京に出てみて初めて、自分の世界の狭さを痛感したからだそう。

その経験を踏まえ、これから社会に出る若者に向けて、こんなメッセージを送ってくれました。

「自分が知っている世界だけでなく、未知の領域にもチャレンジしてほしいですね。サークルでもアルバイトでも、内輪だけで終わらせずに、自分と違う人と関わる機会を増やすと、見える世界は確実に変わります」

デロイトトーマツでは、人材育成の一環として、中高生が社会や仕事に触れる機会もつくりたいと考えています。例えば、高校生に町づくりや商品づくり事業に参加してもらう取り組みをSapporo Social Innovation Hubでやってみたいと小田さんは語ります。

「若いうちから町づくりや事業づくりに関わり、さまざまな業界や産業に触れる機会が増えれば、札幌でもこんなことができると気づけると思うんです。東京にしかチャンスがないわけではない。東京は、動き出すスピードが早いだけです」

しかし、そうしたチャンスに気づけないまま、「東京に行けば何かできるかもしれないと」考えて、道外へ出ていってしまう人も少なくありません。だからこそ、と小田さんは続けます。

「何かを始めたいと考える人たちに向けて、札幌でチャレンジし続けていいんだよということを、私たちは伝え続けていきたいと思っています」

静かな語り口の中に、北海道を思う熱い気持ちが伝わってくるインタビューでした。人口は減少しても、世界に視野を向ければビジネスは広がっていく。その言葉からは、北海道の未来に対する可能性が感じられました。これからも、北海道に根ざしながら、地域と世界をつなぐ活動に期待しています。

▼ご家族とキャンプに行ったときの一枚。
▼ご家族とテニスをしている様子。多趣味な小田さん。
小田 剛さん

合同会社デロイトトーマツ(Deloitte Tohamatsu LLC)
Design & Brand シニアマネジャー

小田 剛さん

北海道札幌市中央区南1条西4丁目1-1 札幌4丁目プレイス

https://www.deloitte.com/jp/ja.html

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