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思い描いた未来を形にできる企業。TCS international

2025.10.20

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札幌市営地下鉄東豊線の月寒中央駅直結のビルにオフィスを構える「TCS international」。整骨院やデイサービス事業などを展開し、北海道と福岡県を中心に76拠点を持つ会社です。「未来は思い描いた通りになる」と断言する代表取締役の福光悠介さんに、経営者としての考え方や事業への思い、これから叶える夢について伺いました。

計画通りに目標を更新し、76拠点を展開する企業に

札幌市中央区で生まれ育った福光さんは、子どもの頃から元気で明るく、粘り強さを持つ性格でした。野球・柔道・スキー・ダンスと、幅広いスポーツを楽しみながら、ひとつのことを極めていくことも好きだったそう。高校卒業後は社会人として仕事をしながら、札幌市内の専門学校に2校通い、柔道整復師と鍼灸師の資格を取得しました。

こちらが、TCS international 代表取締役の福光 悠介さん

「開業するつもりで専門学校に行きました。働きながら夜学に通っていたけど、別にキツいとも思わなかったですね。夜遊びもしてたしダンスもしてたしね(笑)」

専門学校を卒業した福光さんは「TCS international」を立ち上げ、月寒で鍼灸整骨院を開業します。福光さんにとって月寒はまったくなじみのなかった土地。なぜここで開業を?

「専門学校の友達と月見湯っていう銭湯に行って、いい場所だなと思ったんですよ。最初は今の事務所から5分くらいの場所だった。ここに移転したのは2年くらいたってからだから、もう移転して12~13年たつんじゃないかな」

その後、整骨院に加えてデイサービスを手がけるなど、事業の幅を拡大。2016年頃からはさらに介護や障がい福祉へと領域を広げていきます。現在の拠点数は76にのぼり、スポーツ事業部や旅行事業部なども展開し、グループ全体の規模は大きく成長しました。開業当初からここまでの規模にしようと考えていたのか尋ねると、「当たり前ですよ」と即答。

「最初から1億円の会社をつくると決めて、その次は10億、今は30億と、目標を更新してきた。ただそれだけです。目標は常に持たないと。常にね」

事業の始まりは、常に福光さんのアイデアから。やりたいと思ったことを実現してきたといいます。

恵庭市盤尻にて、TCS internationalが展開するキャンプ場「TCS Village」。キャンピングトレーラー泊、手ぶらキャンプもできちゃいます!

「障がい福祉事業を一気に増やしたのはコロナ禍。みんなやることがなくてヒマだったから。社会全体が落ち込んで経済も弱って人員も余っていたし、やるなら今だろうって。札幌の次は苫小牧に広げて。で、北海道の次は福岡って。キャンプ場も作りましたよ。濃厚接触で施設で働けなくなっても、キャンプ場だったら仕事できるだろって」

福光さんが、起業から十数年で「TCS international」を目標通りここまで成長させてきた理由のひとつには、この大胆さと柔軟な発想があったからに違いありません。

未来は思い描いた通りにしかならな

会社をつくるときに描いていた目標を、淡々と実現させてきたかのように語る福光さん。目標を実現するためにどのような努力をしているのか尋ねると、返ってきたのはシンプルな答えでした。

「努力しかしてないんじゃない?受験勉強を毎日やってた人と同じですよ。受験のときに努力しないって考えたら恐ろしいよね。それくらい、いろんなことを真剣に考えて取り組んでますよ」

経営に関する考え方も自分の感覚を大事にしている福光さん。他の人の価値観を知るためにビジネス書を読むことはあっても、それを取り入れることは決してないと断言します。

「人の真似をしていたらこんな感じになっていないよね。多分スーツを着て仕事してるんじゃないかな(笑)」

キャンプ場の青空の下で仕事をする福光さん。

自分自身が楽しめることを最優先にし、思い描いた未来を具体的に数字に落とし込む。その未来は、自分の想像を超えることはないと話します。

「思い描いた通りにしかならないんですよ。悪いことを考えればその通りになるし、いいことを考えてもその通りになる。2030年に100億円の企業になるっていう目標があるけど、それも想像できているから絶対になると思う。目標に向けて淡々とやっているから、その間に売上が良くても悪くても一喜一憂することもないですよ」

事業展開も、福光さんにとっては100億円という目標を実現するための伏線にすぎません。どの地域でどのようなイベントを仕掛けるのかなど、すべては思い描く未来がすでに決まっているからこその取り組みだと語ります。そして、それを支えるのは、「自分ならできる」という確固たる自信。資金調達でさえ「めちゃくちゃ簡単」と笑います。

「銀行のデータを見れば、いくら借りられるかがわかる。その分を投資して、どれだけ売上を増やすかっていうゲームをしてるだけ。例えば不動産だったら、一軒家を買ってアパートにしたら、次は3棟に増やして最後はマンションって計画するでしょう。同じことを会社経営なら事業ベースでやるだけです。あとはそこに対して、マネジメントの仕方や、属人化しない仕組みづくりを考える。でも、一番大事なのは、自分のメンタルが崩れないように維持すること。自分が何をしたいのかちゃんと理解しておかないと一喜一憂しちゃうからね」

挫折はない。あるのは反省と改善だけ

順調に事業を広げてきた福光さん。これまで、挫折を味わったことはなかったのでしょうか。

「挫折?ないですね。断られたり、うまくいかなかったりすることはありますよ。でもそれは挫折じゃなくてタイミングの問題。ちょっと遅かったなって思って反省するだけ。挫折とか悩むとか、人のせいにするとか、そういう概念はない。自己成長しか考えていないから。むしろ挫折する癖があると、経営者には向かないと思いますよ」

福光さんにとって大事なのは、挫折ではなく「反省」と「改善」。失敗を引きずるのではなく、原因を見直して次の一手につなげます。

「目標値があるから常に反省しかしないよね。失敗の原因を反省して改善するだけ。例えば現金を会社に置いていて盗まれたら、置かない仕組みをつくればいいだけ。それも改善でしょう。失敗しても、いちいち感情論で揺さぶられることはないですね」

多くの人が落ち込みそうなトラブルに対して対処する冷静な姿勢は、事業で成果を上げたときにも一貫しています。

「開業当時は、整骨院にお客さんが100人来たって喜ぶこともあったけど、今はないですね。計画を立ててその通りになったっていうのを繰り返してきただけだから。逆に今は達成しなきゃっていう義務感の方が大きいかもしれない。スタッフたちにはプロジェクトを頑張って動かしてほしいし、成功体験が少ない人たちは喜んだ方がいいと思うけど、僕はやっぱり一喜一憂する立場じゃないから」

あくまでも、目標を達成することは経営者として当たり前だという考えを貫く福光さん。だからこそ、計画通りに成果を出したときには、喜びよりも安心感の方が大きいと話します。意外だったのは、予想を超えた成果を上げたときの反応です。

「売上が急に伸びたら、逆に何か穴があるんじゃないかって疑う。予想を超えるっていうのは、自分の管理能力以上のことが起きている場合があるから。例えば仕事が属人化しているかもしれないし、不正が働いている可能性もある。だから計画以上に行き過ぎるのもよくないと思っています」

「挫折がない」と言い切る強さは、反省と改善を繰り返しながら、冷静に計画を進める姿勢の中にありました。

自由を尊重し、本音で向き合う

現在の福光さんの仕事は、グループ全体の統括。基本的に仕事のやり方は各拠点に任せていますが、目標を達成できていない部門があれば、成果を上げられるよう指導することもあるといいます。

「サボってるなって思ったら教育しようとか、売上が伸びていないなら営業研修をやろうかとか、マニュアルを作ろうとかね。そういう話はしますよ」

福光さんの経営方針は、一見するとかなりドライです。しかしその根底には、「自由を尊重する」という考え方があります。福光さんいわく、TCS internationalは「自由が多すぎる」会社。目標がない人にとっては厳しく感じるかもしれませんが、目標を持っている人にとってはやりがいのある職場だと話します。

卓球台上で真剣なミーティングが繰り広げられています。

「最低限のラインは決めているけど、別に仕事中に寝てたとしても『お前の人生がそれで楽しければいいんじゃない』って思う。そいつが楽しいんだったら、いくらこっちがもうちょっと頑張った方が楽しいぞって言ったって、価値観が違うんだから。強要はできないですよね。だからこそ、組織の新陳代謝を促すような環境をあえてつくってます」

人材の離職率を課題とする企業も多い中、福光さんは「会社に合わない人材を雇い続けてもお互いに幸せにならない」ときっぱり。社員から、転職や独立の相談を受けることも多いといいます。

「20年、30年一緒に働こうなんて無理でしょう。逆にそれを約束させること自体がマネジメントとして間違っている。独立したいならやってみたらいいじゃんって言うし、転職したかったらしろっていう話です」

そう語る福光さんに、「社員」とはどのような存在なのか尋ねてみました。

「一緒に金を稼ぐ仲間ですね。中には友達みたいに近い関係の人もいるけど、たいていはちょっと違うよね。でも仲間だから一緒に仲良く酒を飲むこともありますよ」

人材を採用する際の面接は、スタッフにすべて任せているそう。採用したい人材に対しても、特にこだわりはないと話します。

「例えば10人採用したって、全員が仕事できるとは思っていない。中にはできない人もいるし、うちに合わないからって辞めていく人もいる。だから人材もどんどん回していかなきゃダメっていう話。辞める環境と入る環境のバランスを取ることが企業にとってめちゃくちゃ大事なんです」

雇う側も雇われる側も、本音で行かなければストレスがたまるというのが、福光さんの考えです。プライドを守るあまり誤った判断をしてしまうよりも、できないことを認め、がむしゃらに挑戦する方がよいとも。率直な物言いの中にも、福光さんなりのやさしさが感じられます。そして、そのやさしさは施設を利用する人への接し方にも通じるものがありました。

「整骨院に来る人は、マッサージの腕がいいっていうだけで来ているわけじゃないでしょう。『一緒に頑張ろうね』って言ってもらうのがうれしいから来るんだよね。だって、頑張ろうって言われるだけで元気になるんだから」

プライドを捨て、自分にうそをつかず正直になれ

何のために仕事をするのか。経営者として、自分の欲求をしっかり知っておくことが大切だと福光さんは語ります。ご自身は何のために今の仕事をしているのか尋ねてみると、「社会に貢献すること。それだけ」と即答。

「社会に貢献できなきゃ、やる気が出ないじゃないですか。みんなが『俺がやらないと』って思ってやるから、社会って成り立つものでしょ。例えば税金をたくさん払える立場なら、もっと払っていかないといけないし、社会資源が少ない地域に展開できるノウハウがあるなら、やらなきゃいけないし、やりたいって思いますよね」

そうした思いの根底にあるのは、キャリアを築く上で欠かせない要素といわれる、「want(自分のやりたいこと)」「can(できること)」「must(やらなければならないこと)」の3つです。この3つを実現できなければ、「心が燃えない」と福光さんは語ります。

「俺はみんなよりめちゃくちゃやる気がありますよ。だって、何万、何百万っていう人が幸せになるようなことをしてるんだから。例えば、俺がやったことで子どもたちが活躍できる場所ができたら、心の底からうれしいですよ」

TCS international主催のアーバンスポーツフェスティバル「JAPAN CITY SPORTS EXPO」。ランバイクで子どもたちが激走!

今後の事業について尋ねると、海外展開の話が飛び出しました。すでに「アジアユニオンTCSレーシングチーム」という自転車チームを立ち上げ、インドネシア・フィリピン・マレーシア・シンガポールを拠点に物流やイベント事業を進めています。さらに国内ではユニークな構想もあるそう。

「楽しい葬儀屋をやりたいんですよ。例えばレゴを100万円分置いたり、ビリヤード台やダーツを置いたり。アウトドアサウナや岩風呂がある高級ヴィラを作ったり。家族が『ここで葬儀したい』と思えるような場所にしたい。生前葬で一泊できるプランなんかもいいんじゃないかな」

一見突飛にも思えるアイデアですが、福光さんにとっては「人の疑問や不安を解決すること」が仕事そのもの。そこに収益が生まれると考えています。

そんな福光さんは、若い世代に対し、こんなメッセージを送ってくれました。

社員の勉強会を見守る福光さん。

「自分の個性を生かしなさいってことかな。努力も必要だから、自分らしく頑張ってほしい。ストレスをためないためにも、プライドなんて捨てちゃった方がいい」

とはいえ、プライドを捨てるのは簡単なことではありません。どうすればいいのか尋ねると、こんな答えが返ってきました。

「プライドって、自分の弱さを隠すために持つものだから。恥ずかしいこと、自分にはできないことをちゃんと知って、その劣等感を武器に変えればいいだけ。小学校の運動会で靴が脱げたとか、前の職場でヘマをしたとか、女に振られたとか。恥ずかしいと思うことを力に変えればいいんだよ。バカだな俺って思いながら、次は頑張ろうってね。それを隠そうとするからストレスがたまる。自分はダメなんだって認めて、何とかしようと思う方が人は伸びるんだから。心を正直にしないと。自分にうそをついたらダメだよ」

赤裸々で豪快な言葉の奥に、自分の弱さを受け入れる強さや、表からは見えないやさしさを感じるインタビューでした。最後に残してくれた「自分にうそをつかない」という福光さんのメッセージは、これから社会に出ていく若い世代にとって、大きなヒントになるに違いありません。

福光 悠介さん

TCS international 代表取締役

福光 悠介さん

北海道札幌市豊平区月寒中央通7丁目6-20
JA月寒中央ビル2階

TEL. 011-857-9570

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