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明日をつくる未来へのアクション

ダブルダッチを文化として広めたい! 夢は毎日全道で縄が回っていること

2025.9.29

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2人の回し手が2本のロープを回し、そこを跳び手が技を入れながら跳ぶ「ダブルダッチ」。スピード感とエンタメ性あふれる縄跳びの競技です。北海道で、このダブルダッチの普及のために活動しているのが、今回の主人公・日髙龍太郎さんです。縄跳びとダブルダッチのスクール「JUMP FOR ALL」の代表を務め、札幌を中心に各地でレッスンを行っています。高校時代にダブルダッチと出合い、その後、紆余曲折あったものの、「ダブルダッチがあったからこそ今の自分がある」と話す日髙さん。活動拠点としている苗穂エリアにある「さっぽろガレージ」で、これまでのことやダブルダッチへの想いを伺いました。

スイスの高校で出合ったダブルダッチ。その楽しさを広めたいと活動

倉庫だったという天井の高い建物をダブルダッチの練習場として使えるように改装した「さっぽろガレージ」。ここでのレッスンは週に3日、あとは市内のほかのエリアや札幌近郊の江別市、北広島市などでレッスンを行っています。現在、「JUMP FOR ALL」の講師は、代表の日髙さんを含めて4人。2023年に法人化するまでは、日髙さんが1人で各地を回ってレッスンを行っていたそう。

こちらが、JUMP FOR ALL代表の日髙龍太郎さん

「全道179市町村でみんながダブルダッチを習うことができる環境、学べる環境を作りたいという目標を掲げてやってきました。1人では限界があるので、こうやって仲間が入ってくれたことで、その目標に近づくことができたと感じています」

そう話す日髙さんは現在38歳。ダブルダッチと出合ったのは高校生のときでした。日髙さんは宮崎県で生まれ、その後すぐに東京へ。中学卒業まで東京で暮らし、スイスの高校へ進学します。

「別に海外に興味があったわけではなかったんです。なかなか行きたいと思える高校がなくて、たまたま親からスイスにこんな日本の学校があるよと教えられて、説明会に参加したんです。そうしたら、いろいろなスポーツやミュージカルなどが体験できる学校だって分かって面白そう!って思って、スイスへ行くことにしたんです」

高校2年生のとき、日本から赴任してきた数学の先生が、ダブルダッチ指導の第一人者といわれる古賀慎二先生でした。

「先生にダブルダッチのDVDを見せてもらって、やってみたい!と思ったのが最初でした。男子5人で愛好会を作って、先生に指導してもらいました。ダブルダッチは、回すほうも跳ぶほうもリズム感が大事なんですけど、僕はリズム感がイマイチで、当時は5人の中で一番下手でしたけど、とにかく楽しかったんですよね」

勉強やサークル活動など頑張りすぎて急ブレーキ。でも、ダブルダッチに救われた

東京に帰らず、江別で暮らし続けていた日髙さんは、札幌市内の学童保育の指導員のアルバイトを始め、子どもたちにもダブルダッチや縄跳びの面白さを伝えます。そして、社会人サークルNorthRopesを立ち上げ、週末にはチームでの活動も始めます。

「もっと思いっきりやりたいなと思うこともあったのですが、やっちゃうと反動がきちゃうので、もう無理はしないと決めて、きちんと寝て、ご飯も食べて、当時は出力60%くらいで活動していました」

NorthRopesを立ち上げたときのメンバーは、日髙さんともう1人だけ。ダブルダッチは縄の回し手2人に跳び手がいるのが基本。2人だけだとダブルダッチを楽しめませんし、技を磨くこともできません。

色んな技を見せてくれました!
ブレイキングダンスを融合。アクロバティック!

「縄を回しながら跳ぶジャイロという技があるのですが、2人しかいないんで、ジャイロばっかり練習して、結局ジャイロを極めちゃった感じになってしまって(笑)」

ところが、このジャイロの技に注目が集まり、ダブルダッチ界で日髙さんは一躍有名人に。(ジャイロ成功の動画はこちら)また、SNSを使って活動の様子を伝えたり、仲間募集のポスターを貼ったり、地道に続けていると次第に仲間が増えはじめます。

「メンバーが増え、大通公園などでパフォーマンスを披露できるようになると、今度はファミリーでダブルダッチをやってみたいという方が現れ、家族向けにダブルダッチを教えるようにもなりました。あとは、いろいろなお祭りやイベントにも呼ばれるようになるなど、少しずつ輪が広がりはじめました。また当時、練習していたのは、店が閉まったあとの狸小路だったんですが、同じ場所で練習していたほかのストリートパフォーマーの方たちとのつながりもできて、一緒にイベントもやりましたね」

更なる広がりのため28歳で専門学校へ。大会を主催し、キッズスクールも開始

NorthRopesの仲間たち。

ファミリー向けのレッスンに参加する人やNorthRopesの仲間も増えましたが、次第にこのままだとこれ以上の広がりは見込めないと日髙さんは考え始めます。

「毎日、全道のどこかで縄が回っているような状況にしたいと思って普及活動に励んでいたのですが、あるとき、このまま片手間でやっていてはダメだと思ったんです。ダブルダッチ一本でやっていくと腹をくくらなければと思って、まずはスポーツのことをもっと深く知らなければ根本的な部分が変わらない思い、28歳で恵庭のスポーツの専門学校へ入学しました」

専門学校に入ってからの日髙さんは、本格的にダブルダッチの普及に向けて動き始めます。まずは、北海道で初となるダブルダッチの大会を自ら主催。この大会は、その後も毎年続き、今年(2025年)の9月、記念すべき10回大会が開催されました。そして、専門学校を卒業する直前には子ども向けのスクールもスタート。

北海道のダブルダッチ大会「ぽてと杯」初開催の様子。
先日行われた10回目の大会の様子。どんどん規模が拡大していますね!

「これまでは大人にばかり目が向いていましたが、全体的な普及や広がりを目指すなら子どもたちを育てていくことが大事だと気付きました」

スクールは、札幌、江別、恵庭の3カ所からスタート。学童保育の指導員としての経験もあり、子どもたちとの接し方が上手な日髙さんのスクールは徐々に評判となります。

また、パフォーマーとしてさまざまな大会にも出場してきましたが、次第に各地の大会に審査員としても呼ばれるようになり、フランスで行われた国際大会の審査員を務めたことも。

子どものダブルタッチ体験会にて、縄をまわす日髙さん。

悪いことばかりではない。コロナ禍もオンラインを使うなどアイデアで乗り越える

ダブルダッチ一本でやっていこうと決めてから、少しずつでしたがやりたいと思っていたことを形にすることができ、順風満帆に進んでいるように見えましたが、コロナの感染拡大によってスクールのお休みを余儀なくされます。

「でも、リアルでレッスンができないと分かって、すぐにzoomを使ったオンライントレーニングをスタートさせました。コロナがひどかったときは子どもたちも学校が休みだったので、朝から画面越しにみんなで体操をして、昼は実際に体を動かし、夜はストレッチと座学とびっちりスケジュールを組みました。これが親御さんには好評で、体が鈍らなくてよかったと言ってもらえました」

日髙さんが主催で続けてきた大会に関しても、動画を使ったオンラインで開催。

「コロナは大変でしたけど、悪いことばかりではなかったと思います。オンラインのおかげで、全国のダブルダッチのパフォーマーとつながることができて、業界全体の風通しがよくなったと感じています。福岡の人たちと合同で『めんたいぽてとカップ』をやったり、千葉の人たちと『ピーナツポテトカップ』をやったりね。あと、動画のおかげで技術面の地域格差も減ったと思います」

また、コロナ禍の2020年には北海道教育委員会と共同で、「なわとび全道制覇MAP」を作成。道内にある179市町村の各面積の10分の1の数値分の回数を縄跳びで跳ぶと、その市町村部分の色を塗ることができるというもので、全道の小学校で配布されました。

子どもたちの自信になれば…。全道でダブルダッチが学べる環境を整備したい

コロナを乗り越え、その後も日髙さんのスクールの数は順調に増えていきます。日替わりで各地へレッスンに行くものの、パフォーマンス大会、計測大会などのイベントの企画や運営も行わなければならず、さすがに1人では限界が…。そこで、2023年に株式会社JUMP FOR ALLを設立し、スタッフを雇用。日髙さん1人ではカバーしきれなかった部分をお願いできるようになりました。

「全道179市町村でダブルダッチを習うことができる環境を整えることができたら、自分がやってきたやり方を全国の仲間にも伝授して、全国各地でダブルダッチを子どもたちが学べるようにしたいですね」

そして、日髙さんは「僕はダブルダッチを通して、子どもたちに豊かな人生を歩んでほしいと考えています。ダブルダッチを一生懸命やっていることが、その子の自信につながればと思っているんです」と話します。

「すべての子がトップを目指す必要はなく、トップ選手を目指したい子は目指して頑張ればいいと思うし、スクールでもそこを目指す子にはその指導をしています。でも、僕はトップ選手にならずとも、楽しく跳ぶだけでも十分いいと思っているし、縄跳びが苦手という子にも気軽に来てもらいたいと思っています。ダブルダッチをカルチャーとして楽しんでもらえたらと思っています。そのためにもダブルダッチを広く普及させたいと考えています」

とても話しやすい雰囲気で、一つひとつの質問に丁寧に答えてくれた日髙さん。子どもたちのことを話すときの日髙さんのまなざしがとても優しかったのが印象的でした。

日高 龍太郎 さん

株式会社 JUMP FOR ALL

日高 龍太郎 さん

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